2016 Fiscal Year Research-status Report
全ての学習者が発展的に考える算数・数学の授業を構築するための基礎的研究
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15K04399
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐藤 学 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (90587304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重松 敬一 奈良佐保短期大学, その他部局等, 特任教授 (40116281) [Withdrawn]
赤井 利行 大阪総合保育大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40441620)
杜 威 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (30240683)
新木 伸次 国士舘大学, 体育学部, 講師 (30450159)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造的発展 / 発見的発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、全ての学習者が発展的に考える授業の構築に向けて、発展的に考えることのメカニズムを明らかにするため、文献調査と授業実践の分析から進め、構造的発展と発見的発展に整理した。 1.構造的発展については、秋田大学教育文化学部研究紀要教育科学部門第72集に掲載された。この論文では、清水静海(2006)、中島健三(1982)らの先行研究を参考に、発展的に考えることを、統合的に見てより簡潔・明瞭・的確なものを求める態度に着目して算数・数学の方向性を示す観点の「統合」、構造化に向けて働く観点の「一般化」と「簡潔・明瞭」の3観点を抽出した。また、これらの観点は「問題発見(統合)→解決過程(一般化)→解決結果(統合)[全過程を通して簡潔・明瞭]」と問題解決過程に配したモデルに整理した。さらに、観察した授業の考察をもとに、構造的発展の様相の具体を示した。なお、研究の遂行にあたり、助成金を用いて、秋田・東京での研究打合せ(旅費、会議費)、秋田・広島での授業実践の調査(旅費、授業記録用の機材、プロトコル作成に係る経費、動画データの送付・回収)、国際学会における情報収集(旅費、参加費)の支払いや、参考となる文献を購入した。 2.発見的発展については、東北数学教育学会年報第48号に掲載された。この発表および論文では、構造的発展のきっかけに注目して、当面の問題から次の問題へと発展的に気付くことを「発見的発展」として定義した。発見的発展は、構造的発展をより主体的なものにする視点であり、先行研究にはない新たな視点である。さらに、観察した授業の考察をもとに、発見的発展の様相を具体的に示すとともに、構造的発展との関係をモデルに整理した。なお、研究遂行にあたり、助成金を用いて、秋田での授業実践の調査(旅費、プロトコル作成に係る経費、動画データの送付・回収)、学会発表(旅費)の支払いや参考となる文献を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.発展的に考えることのメカニズム 1年次において実施した発展的に考える授業についての教師の意識調査から、教師の発展的に考えることの理解が十分でないという実態を踏まえ、発展的に考えることのメカニズムを明らかにする必要があった。 2年次は、発展的に考えることのメカニズムについて、統合、一般化、簡潔・明瞭の3観点からなる「構造的発展」と、当面の問題から次の問題へと発展的に気付くことの「発見的発展」の2点に整理することができた。さらに、構造的発展と発見的発展の関係や問題解決過程への位置づけをモデルに整理することができた。 2.発展的に考える算数・数学の授業モデルの開発 構造的発展と発見的発展の視点と両者の関係を踏まえ、授業実践の観察・調査や先行実践の分析を行い、発展的に考える授業モデルに必要な要素について、学習者の視点に立つと、「発見的発展から構造的発展の過程における数学的構造への注目・観察とそこからの気付き」、「発見的発展から構造的発展への過程における数学的構造への気付きとそれが不適応となる困難の経験」、「困難の解決による数学的構造の理解と確信」、「確信した数学的構造を発展させようとする意識」の視点と、これらの視点を含有する学習経験に基づいた「発見的発展の構え」や「構造的発展の構え」を視点として抽出している。また、指導者の視点に立つと、学習者の発見的発展の構えや構造的な発展の構えを形成したり、発見的発展から構造的発展への過程における気付きを促したりする上で、発展的に考えることを示唆する「指導者の口癖や態度癖」を視点として抽出している。そして、これら抽出した視点を配した授業モデルを開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した発展的に考える算数・数学の授業モデルについて、授業実践を実施し、検証を行う。検証にあたっては、各視点における具体的な様相を析出し、汎用性のある授業モデルとなるよう精緻化を図る。
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Causes of Carryover |
当初、2年次計画では、発展的に考えることのメカニズムの解明を行うことにしており、秋田での授業実践を調査した。調査対象として実施した秋田・広島の授業からは、教師の意識の実態を質的に確認すること、発展的に考えるメカニズムの理論を構築することができた。しかしながら、これらの授業は、本研究が構想する発展的に考える授業を完全に具現化するものではなかったことから、調査の実施が3回に留まったためと考える。各都道府県教育センターや各教科書会社等の事例をメタ分析することにより進めることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3年次の使用計画としては、理論構築した授業モデルの検証調査に係る旅費、学会への参加のための旅費の使用を計画している。
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Research Products
(5 results)