2017 Fiscal Year Research-status Report
乗法概念領域の概念間のつながりに着目した教授・学習に関する臨床的研究
Project/Area Number |
15K04402
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
市川 啓 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20624745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 光一 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80225218)
田端 輝彦 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (80344745) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乗法概念領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,乗除法,有理数,倍,割合,比例等に着目し,それらの概念が関連付きながらどのように進展するかを考察していくものである。平成29年度は2編の論文を執筆し,4回の学会発表を行った。成果の概要を以下に示す。 1) 数学教育史からのアプローチによって,割合がもっとも強調された昭和33年の学習指導要領とそれに伴って生じた割合論争の検討から,割合が強調された背景に分数の乗除を小学校で学習することがあり,この点から乗除法と割合の関連付けについて検討した。その上で,整数の乗除の組み合わせで答えが求められる速さに関する問題解決を,形式を統一する点から見直し,割合の見方を用いることで分数の乗法として表し直す授業を構想・実践し,考察を試みた。 2) 認知的なアプローチによって,異種の2量が関わる除法の場面において,一方の測度空間で構成したユニットで全体を再構成しつつ,それに合わせて対応するもう一つの測度空間のユニット化やノルム化を行うことを意図した学習活動を構想し実験授業を行った。これによって乗除法と比例,割合の関わりを検討することに接近できた。 3) 割合の概念が顕在化する小数倍の学習について,割進む除法を学習する前に,再測定の操作に基づいて割合を小数で表す問題解決を行い,測定から倍概念への進展を探ることを試みた。小数倍の概念の進展でポイントとなる1と見た大きさの 0.1 にあたる大きさを特定し,「倍の意味としても解釈できる一つの数量」に伴って「もう一方の数量」も10等分すればよいという手続きを子供たちが見いだすプロセスを構成することができた。特に,0.1 にあたる大きさを100gとする間違ったユニット化の妥当性を検討するとき,つくり出したユニットによって基準を再構成することが表面化し,それを反省的に振り返ることを通して正しい下位ユニットの作り出し方を見いだすことができることを実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究のまとめをすべき最終年度にあたる平成29年7月に、研究代表者の市川が、山形大学から宮城教育大学に異動することになった。29年度は山形大、宮城教育大の2つの大学を行き来しながら授業並びに、両大学の学部生の卒論指導、山形大の院生の指導にあたったため、研究時間の十分な確保ができず、計画通りに進めることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延長し、当初の研究目標の実現を目指す。そのために、平成30年度は概ね次のことに取り組む計画である。 ① 乗法概念領域の進展に関わる単元の参観や、実験授業、アンケート調査等の実施により、データ収集を図ると共に、その分析考察により、より確かな論の構築を図る。 ②「割合概念を軸とした乗法概念領域の教授・学習に関する論文」「中学校における関数としての比例概念への進展を意図した教授・学習に関する論文」「比例と乗除法の関わりについての教授・学習に関する論文」の執筆を通して研究のまとめを行う。 ③研究の成果を、日本数学教育学会や東北数学教育学会において発表する。
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Causes of Carryover |
研究のまとめをすべき最終年度にあたる平成29年7月に、研究代表者の市川が、山形大学から宮城教育大学に異動することになった。29年度は山形大、宮城教育大の2つの大学を行き来しながら授業並びに、両大学の学部生の卒論指導、山形大の院生の指導にあたったため、研究時間の十分な確保がままならず、計画通りに進めることができなかった。それに伴って次年度使用額が生じた。これを、データ整理のための物品購入、資料収集や研究のまとめに係る旅費に用いる計画である。
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