2018 Fiscal Year Research-status Report
社会科における子どもの公正認識と教師の公正解釈に関する研究
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15K04412
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
川崎 誠司 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10282782)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多文化教育 / 公正 / 正義 / 衡平 / エクイティ / ハワイ / equity / social justice |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も昨年度までに引き続き,「公正さ」に関する理論研究を進めるとともに,国内外の社会科の授業観察および記録の分析・解釈と,北米の研究者によるアカデミック・レビューを受けることに努めた。理論と実践の両面に焦点を当てて本研究を進めて行き,その正当性について海外の研究者に検討をしてもらうということである。 「公正さ」に関する理論研究は,主として法哲学の観点に立って「社会正義 (social justice)」と「公正さ (equity)」の関係性を,多文化社会を前提として探究するものである。「公正な社会的判断力の育成」は社会科の中心的な教科目標であり続けているにもかかわらず,国内の先行研究に乏しく,北米においても 「学習のプロセス」に焦点を当てて解明しようとする研究がほとんどない。本研究はこの点を切り拓いていく。 社会科の授業については,国内の小・中学校9校とハワイの小学校2校で観察をすることができる環境にあるので,「公正さ」の理論的側面を社会科の授業内容の分析枠組とし,「公正さ」に関連するコミュニケーションを拾い上げていくという質的研究を蓄積していった。 この方法は,通常の社会科の授業における自然なコミュニケーションの中に生じる「公正さ」に関する教師と児童生徒の認識を収集することができるが,事例を増やすことにはなりにくい。そこで今年度は,別予算で開発した「公正さ」の認識をねらいとするウェブ・アプリケーションを社会科の授業で活用してもらうこととした。授業づくりにも参画し,教師の公正認識の把握に努めるとともに,授業観察により教室内のコミュニケーションを豊富に記録することを繰り返した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会科の授業観察と記録の分析・解釈を蓄積できている。質的研究に基づく授業研究は,常に順調に推移するというわけでは決してないが,データの蓄積が順調に進みつつあるので,その丁寧な分析・解釈に努めることにより,段階的に研究を進めることができている。 今年度の予算においては,例年アメリカの学校を訪問していた時期に体調の不安が生じたため旅費支出をしていないが,その後その不安が払拭されたため,別の2回の機会を活用して渡航し,授業観察とエキスパート・レビューにより遅れを補うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記したように,今年度は国外への旅費支出を控えたため,残額は次年度に繰り越すこととした。これを活用して,最終年度には国内外での学校訪問を増やし,研究の最終まとめに活かしたいと考えている。 最終まとめに向けては,理論研究と実践研究の統合モデルの構築を目指したい。本質的な「公正認識」(「これが公正である」といった状態を想定し,それをどう教えるかと考える思考パターン)に研究代表者自らが陥ることなく,授業の当事者たちが社会的事象をどう捉え,どういった状態を「公正」であると考えるのか,これを具体事例から紐解き,そこから帰納的に公正学習のモデルを考えることにする。
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Causes of Carryover |
11月のアメリカ本土での学会参加と授業観察を予定し,予算計上をしていたが,体調の経過観察の必要が生じたため1月までの経過観察を行った。疑いが晴れたのでこれを次年度に繰り越し,5月または10月の渡航に支出して現地での授業観察を行いたい。
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Research Products
(4 results)