2015 Fiscal Year Research-status Report
公民・経済分野における理論的対立の歴史的分析及び教育方法の研究
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15K04416
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
柴田 透 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (20242802)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済教育 / 公民 / 政治・経済 / 日本 / 高校 / 社会科 / 教科書 / 教科教育学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,学校教育の公民分野,特に経済分野の教育内容において経済学の各学派がどのように反映し影響しているのかについて歴史的分析を行い,その上で教育における方法について検討することを研究の目的としている。 本年度は,学校教育における経済分野の教育内容の歴史的な内容について,高等学校の政治・経済の教科書の分析を行った。さらに,収集した資料の分析は,量的および質的な時系列分析を行った。量的分析としては,出版社や教科書の数および占有率の歴史的変化の把握とその変化の理論的考察を行った。そして質的分析としては,教科書の内容の特徴の把握と歴史的変化の把握を踏まえた理論的考察を行った。これまで,高校政治・経済教科書の分析は,断片的には行われていたが,すべての期間を通じて歴史的分析はこれまで行われていない。この分析を行ったところに,この研究の第一の意義がある。 これらの研究成果は,「高校政治・経済教科書の歴史的変遷の分析」という論文としてまとめており,現在投稿する準備中である。また,この成果をもとに,高校教科書における経済学の学派の影響の分析を行った。従来の方法とは異なる調査方法を設定し,さらに仮説を立てて,その仮説の検証を行い,ほぼ仮説を肯定する結果となることが明らかになった。このことはこれまで行われていない調査だけでなく,過去からの内容の歴史的分析を行うことで,現状の問題点と改善点を照射することができたという点で重要性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,戦後発行された全ての高校政治・経済教科書の収集・調査を行い,その歴史的変遷の特徴および学派対立の観点からの調査を行った。まず,政治・経済の教科書がはじめて出版された1965年版から最新の2014年版まで200冊の教科書すべての収集を行った。古書店での購入,地元の図書館や教育関係施設などの複写,および遠方の研究施設へ出張し,複写およびPCによるデータの入力を行った。今年度の研究費用は,この作業の経費に当てられた。ただし,当初予定されていた資料の複写および整理の作業には,謝金を使用する計画であったが,資料のほとんどが遠方の研究施設に保管されていたことが判明し,作業者を遠方に出張させることが困難という状況のなか,研究者本人による単独の作業に変更した。 学派分析の方法を検討し,さらに作業仮説を立てて,その仮説の実証作業をほぼ修了している。作業の量が膨大であったために,学派の分析に入る前に,量的・質的な歴史的分析を行い,その成果を踏まえて,学派の分析に入るという二段階の過程を取ることになった。前段階では,高校教科書の教科書の分量や種類・出版社数といった量的分析とその歴史的変化の特徴を抑え,その理論的分析を行い,その研究結果を踏まえて,後段階では経済学派の影響という観点から,内容の分析を行い,その歴史的変化を仮説の検証という形で分析し,それらの結果をまとめ,学会での口頭発表と学会誌への投稿という形で公表する準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
戦後の高校政治・経済教科書における全ての期間において,経済学派の影響がどのように教科書に反映されてきたのかという観点から,分析するための方法の開発と調査した結果を説明するための作業仮説の提案し,その仮説の妥当性について検証結果を整理して,学会発表し,さらに論文にまとめる。具体的には,平成28年9月の経済教育学会で研究成果の発表を行い,その後論文として学会誌に投稿を行う予定である。 また,これらの過程と並行して理論的対立に関する方法論の理論的検討を行う。初年度に収集し分析した高校の政治・経済の教科書における対立する経済諸学派と教科書記述との関連の分析に基づき、対立する理論をいかに学校教育の場で扱い教育してゆくのかという教育方法の理論的な検討を行う。まずは、これまで対立する問題を教育がどのように扱って来たのかについて、先行研究のサーヴェイを行う。また、他方で論理的思考が問題解決学習の重要性から重視されるが、依拠する理論が複数併存する場合には、いくら論理的思考を行っても、論理が複数併存する場合にはそこから導き出される結論ないしは命題が必ずしも同じものになるとは限らないという問題が生じる。このような問題に対して、クリティカル・シンキング(批判的思考)の手法が有用であるとされてきた。そこで、これまでのクリティカル・シンキングに関するジョン・デューイなどの古典から現代までの主要な文献についても読了し、対立する問題の処理という観点から,その方法と内容についても、整理・検討を行う。
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Causes of Carryover |
246円という少額の残額のため,使用目的と合わず,次年度使用額が生じる結果なった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算に合計して,従来の計画どおりに使用する計画である。
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