2019 Fiscal Year Annual Research Report
Significance of Hans Freudenthal's Didactics of Mathematics
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15K04418
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 伸也 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (10570434)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | H. フロイデンタール / Hans Freudenthal / 数学教育論 / 教授原理 / 数学化 / 教授学的現象学 / RME |
Outline of Annual Research Achievements |
新学習指導要領(平成29年告示、平成30年告示)の全面実施に向けて、算数・数学科においては、現実の世界からの数学化と数学の世界における数学化を含む「算数・数学の問題発見・解決の過程」の具体化や、この過程を授業において実現する手立ての具体化が求められている。本研究では、現実の数学化さらには数学の数学化という一連の数学化を数学の特質ととらえ、この活動を数学の学習教授過程において実現する原理や方法を追究したハンス・フロイデンタールの後期数学教授論を体系的に再構成し、その特質を明らかにすることを目的とした。 主として以下のことが明らかになった。フロイデンタールの後期数学教育論を単純化して言えば、陶冶という教育の目的、そのための一連の「数学化」という数学教授の目的のために、数学教授論の中心に教授原理「追発明」があり、この原理に基づく数学の分析である「教授学的現象学」がなされる。こうした数学教授論の基底には、科学や数学を人間活動であり方法や手段とみる科学観と数学観、選択の自由のもと文化を創造したり再創造したりするとする人間観、陶冶を多様な経験や知識や能力を自らの活動によって統合する過程とする陶冶観がある。彼の数学教育論を基礎とし学習者の「追発明」の実現を目指し、彼の後期数学教育論に基づく"Realistic Mathematics Education"(RME)は、数学教授の6つの原理や、学習教授過程の構成のための教授設計法である「創発的モデル化」を含む。その学習教授過程の特質は、現実感を重視し、「モデル」の構成と移行を促す意図的な文脈や問いが設定され、学習者が数学を用いるとともに多様な数学的な洗練をする機会をもたらすことである。フロイデンタールの数学教授論は、教師やカリキュラム等の開発者による技術の実践によりもたらされる数学教育の科学の萌芽のための学問論的内容にその特質がある。
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