2016 Fiscal Year Research-status Report
言語活動から切り離さずに「表現の工夫」を扱うための日本語学・心理学の連携的研究
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15K04420
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岩男 考哲 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (30578274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 史 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (80608026)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国語教科書 / 新出語彙 / 小学校低学年 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主たる研究実績としては,昨年度の当科研の研究報告において今後の課題として挙げた点への取り組みが挙げられる。 その「今後の課題」とは,昨年度の研究報告内において「比喩に限らず,その他の語彙の調査も行いたいと考えている」と述べたものである。その調査を今年度実際に行った。その語彙調査の結果,国語教科書に登場する新出語彙(本文の欄外に取り出して扱われている語彙)には,日常生活において用いられるもの(こうした語彙が登場することは容易に予想される)だけではなく,日本国内において生活を送る限りは,到底目に(耳に)することもないであろう事物を表す語彙も存在することが明らかになった。しかも,そういった日常生活では触れることもない事物を表す語彙が小学校低学年(小学校1年生~3年生)において既に導入されているのである。これは,換言すれば「当該の教材を理解するためだけに導入された語彙」と言うことができよう。こうした語彙が(しかも小学校低学年において)導入されることの是非については問われるべきである。 その是非を問うための1つの足掛かりとして,知的障害児に対する教育を専門とする研究者との共同研究を行った。それは,上記の是非を問う過程が分析者による主観的なものとならないようにするためには,ある一定の基準が必要になると考えたためである。具体的には,国連総会において採択された「障害者の権利に関する条約」の内容を基準とし,上記の国語教科書の内容との照らし合わせを行い,その是非を問うた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の作業が順調に進んでいたため,今年度の作業にスムーズに移行することができたのが最も大きな理由である。また,共同研究者とのコミュニケーションも円滑に行える環境にあることもとても有益に機能していると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の汎用性を高めていくために国語教科書内の調査だけで終わらせずに,他の何らかの基準との照合を行いたいと考えている。それは,教科書の分析結果に対して分析者がただ意見を述べるだけでは(もちろん,それも必要なことではあるが)その有効性がどの程度有益なものなのか定かではないためである。そのため,本研究の当初の予定であった児童の発達という観点に加え,障害を抱えた児童への教育という観点も取り入れることにしたい。現在,既に取り入れ始めているのだが,それを今後更に推し進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
大学所蔵の資料が利用できることが分かったため,その分,文献等を購入する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて研究発表における,資料印刷や会議費用等に使用する。
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Research Products
(2 results)