2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04426
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
寺田 守 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (00381020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国語科教育 / 読むことの学習 / 一文読み / 読者反応理論 / 間テクスト性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は小集団による読書プログラムの検討を行うとともに、読解力向上効果の検証を行った。 まず「花はどこへいった」を対象として、文学作品が教科書に掲載される時、すでに特定のメッセージが付与されてしまうという文学教材の特質を明らかにした。国語教科書批判を検討することで、作品の表現を見ることなく作者の思想によって作品の意味が特定される状況について考察した。特定の解釈を教える文学教材の授業が、教師の意図しないところで「惚れさせる国語教育」(時枝誠記)となっている可能性を明らかにした。そして間テクスト性概念や表現分析を行うことで、こうしたあり方を越える方法を検討した。 次に前年度に引き続き「高瀬舟」の教材解釈についての文献調査を行った。「高瀬舟」における教室の中の〈作家/作者〉は、教科書教材として学習者に学習対象として登場する時にすでに「中学校の段階で森鴎外の作品を読んでほしい」というメッセージと共に提示されていることが分かった。その上で「高瀬舟」の特徴を生かした学習指導目標を検討するために、どのように読むことができるのかを考察した。そして一人の読者として喜助の二つの語りを「わが身の上に引き比べて」〈読む〉学習の可能性を検討した。 さらに小学校教材「ごんぎつね」を対象に、ラファエルの提案するヴィゴツキースペースを手がかりとして、教室で用いられる慣習的知識の具体を検討した。設定、人物、プロット、表現、語りといった観点から「ごんぎつね」の教材分析を行うことで、教室の場面において現れる慣習的知識の様相を記述した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、国語科「読むこと」の学習において、一文の意味を考えるという解釈法と小集団討議という学習活動とを用いた一文読みと名付ける指導法を開発し、その読解力向上効果について検証するものである。 計画では、平成28年度は①一文を読む解釈法の開発、②小集団による読書プラグラムの検討、③読解力向上効果の検証を行う予定であった。本年度は、①②は計画通りの進捗であり、③についても授業実践は進んでいる。また本年度の研究成果を論文として公表することも行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は3年目であり、最終年度である。引き続き研究計画に沿って進めていく。前年度に引き続き、実践・研究論文を検討することで小集団による読書プログラムの意義と課題について解明していくとともに読解力向上効果について検証していく。
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Causes of Carryover |
書籍の購入予定が変更となり当初計画よりも安く購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金については、文献購入費用や文献複写費用といった資料収集のために用いる。
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Research Products
(5 results)