2015 Fiscal Year Research-status Report
生活と自然と科学をつなぐ学校教育における藍草の活用
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15K04454
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
瀬戸 房子 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (00179350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 藍 / インジゴ / 生葉染め / 青 / L*a*b*表色系 / 栽培 / 剪定 / 遮光 |
Outline of Annual Research Achievements |
藍染を学校教育に導入することは、染色に興味を持たせるばかりでなく、地域の資源や環境の視点から生活を捉える態度を育む上で意義深く、藍の栽培や染色を通して日本の伝統文化や歴史、染色の化学的メカニズムを学ぶことに繋がる。そこで、発達段階に応じた藍染めの方法について提案を行なう。2015年度は染色布の青色系の色彩に焦点を当てて染色時間と酸化時間について検討を行った。学校教育への導入を目指して、2015年5月から11月にかけて鹿児島大学教育学部敷地内の実習地で蓼藍の栽培を行ない、染色実験を行った。染色方法は小学校低学年または特別支援学校の生徒を対象とすることを想定して生葉染めとし、被染色布として絹布を用いた。染色布の色彩の測定を行い、L*a*b*表色系で数値化した。絹布の生葉染めの染色工程における染色時間と酸化時間の検討を行った結果、クロロフィルの吸着を抑え、インジゴを定着させて青色を発色させるためには、染色時間、酸化時間共に10min以下の短時間で行うことが望ましいことが分かった。時間の限られた授業において教材化が可能であると考えられる。また、日照時間が短い時期に成長した葉を用いることによって青味の強い染色布を得ることができた。そこで、9月から2ヶ月間に渡り、藍の生葉染めを行なった結果、遮光を行うと日数経過に伴う青色色素の減少が抑えられた。さらに、剪定による青色色素の影響を調べた結果、剪定後に成長した葉の方が剪定しない葉と比べて染色物の青味が強いことが分かった。しかし、剪定後に成長した藍葉を遮光するよりも、剪定せず遮光することによって青色色素の含有量の減少が少ないということが分かった。学校現場で生葉染めをする場合、遮光することで生葉染めを11月下旬でも青色に染色することが可能であり、藍染めを教材として取り入れた場合でも年間計画に柔軟性をもたせることが可能であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低学年を対象とした染め方については、生徒に興味を持たせながら授業時間内に収まるような、染色に関わる一連の条件の確立ができたと考える。加えて、剪定による効果を明らかにし、さらに、遮光という栽培方法で葉中の色素含有期間を延ばすことができることを明らかにしたことは、藍染めを教材化した場合に年間計画を立てやすくし、また、その現象を教育内容に入れることも有用と考える。 産地での調査については、現地調査は次年度も引き続き行ない、現在の藍染めの実態に関する資料の作成を行なう予定である。 他教科の教科書の分析も引き続きおこなう必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
天然素材を染料とした染色では、赤や紫を染めることのできる材料は少なく、さらに染料となる材料と染色物の色が異なるものは少ない。緑色の葉から染められる染色布の色彩の意外性は、子どもたちの興味を引き付けることができると思われる。長期保存が可能で赤紫系の染色物を得る可能のある冷凍葉を用いて、被染色物の保存方法や染色条件による色彩の違いについて検討を行なった。さらに、授業教材として採用する場合の基礎資料とするために、染色工程や所要時間、染色物の色彩の安定性等について考慮し、冷凍葉を用いた染色の具体的な条件設定や染色方法の検討を行なう。実習地における栽培方法は平成27年度と同様に行う。保存方法による葉中の色素の変化を分光光度計で、適切な染色方法の検討と発色の違いについて色彩色差計で調べる。また、産地での調査について、平成27年度に訪問していない地域の現地調査について引き続き行ない、現在の藍染めの実態に関する資料の作成を行なう。他教科の教科書の分析も引き続き行い、横断的教材の原案を作成する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、生葉染めに関して小規模な実験によって適切と思われる染色条件、染色期間を確立し、小学校のクラス規模の染色を試みる予定であったが、イオン交換水製造装置が故障し、実験の出来ない期間があった、そのため、小学校での実践を想定した染色ができず、大規模な刈り取り、色素抽出を行なうことが出来なかった。予定していた設備の購入、栽培、刈り取り、染色の補助の雇用を十分行うことができなかった。イオン交換水製造装置は今年度末に既に新規購入し、実験を再開している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の計画に加え、平成27年度の計画のうち小学校での実践を想定した染色を行なうために、作付面積を増やし、栽培を行ない、小学校での実践を想定した染色とその条件を基にして、その教材化を具体的に構想する。さらに、他教科の教科書の分析を進め、横断的教材の原案を作成する予定である。
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