2016 Fiscal Year Research-status Report
生活と自然と科学をつなぐ学校教育における藍草の活用
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15K04454
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
瀬戸 房子 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (00179350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 藍 / インジルビン / インジゴ / 冷凍保存 / 赤紫 / 酸化 / L*a*b*表色系 / 繊維染料選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
藍葉には発色の異なる複数の色素が含まれており、天然素材を染料とした染色では、赤や紫を染めることのできる材料は少なく、さらに染料となる材料と染色物の色が異なるものは少ない。緑色の葉から染められる染色布の色彩の意外性は、子どもたちの興味を引き付けることができると思われる。 2015年には青色系の染色物を得ることを目的として、生葉染めの染色条件の検討を行い、生葉を用いて、より青色系の染色物を得る方法を検討した。さらに、教育現場では年間指導計画との兼ね合いで、より長期間に渡り色素を保持できる方法が求められることがあると考えて栽培方法の検討を行った。 2016年には、年間計画の作成に当たり、染色実習の時期を優先する必要性が生じないことに加え、藍に含まれる色素のうち赤色系統の染色物を得ることを目的として、藍葉の冷凍保存による染色を行なった。藍葉は冷凍することでインジゴ以外にインジルビンの生成が促され、染色温度によって青系統から赤紫色系統の染色物を得られること、インジルビンは酸化によって生成されることから、冷凍時の酸素量が関係することを明らかにした。生葉染めは学校教育でもしばしば行われ、青緑色の染色を行なっている例はあるが、冷凍葉での赤紫系統の染色の例は見られない。青緑系統から青色が発色するインジゴの同異体であるインジルビンによって赤紫系統の染色布が得られることから、藍葉での染色を通して、科学的な知識を体験的に学ぶこともできる教科を超えた横断的な教材となりうると考える。また、インジゴとインジルビンでは繊維によって染色の可否や発色が異なり、インジゴは、羊毛、絹、ナイロンに、インジルビンはアセテート、アクリル、ナイロンに染着することを明らかにした。このことは繊維の染料選択性についても学習できる教材として有用であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
藍に含まれる色素のうち赤色系統の染色物を得ることを目的として、藍葉の冷凍保存による染色を行なった。藍葉は冷凍することでインジゴ以外にインジルビンの生成が助長されることを明らかにした。また、インジルビンの染色は高温で行なう必要があること、インジルビンはアセテート、アクリル、ナイロン等の疎水性の繊維に染着または吸着することを明らかにした。今年度より、学校教育において、生葉染め、煮染めを行なうために適当と思われる対象学年と授業内容について構想を立てている。授業実践のための協力者の話し合いを進めている。現在、播種の準備を進めており、収穫と同時に染色を行なう予定で、そのための必要用具についても買い揃えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生葉染めによる青緑系の染色は、加熱することもなく、簡便で安全に行なえる染色であることから、幼児や小学校低学年の児童にも行なえる実習であることから、2017年度は、公益財団法人かごしま教育文化振興財団・かごしま市立科学館主催の「青少年のための科学の祭典鹿児島2017」において、参加者に対して、染色を実際に行なう参加型のショーを行なう予定である。また、2015、2016年度に確立した条件を基に、学校法人れいめい中学校において、栽培から染色までを家庭科の授業として行なう予定である。さらに、授業内容と学習者の発達段階、適切な教科について検討を深めるために、関連すると思われる教科の教科書の分析も引き続き行い、横断的教材の原案を作成する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、赤色系の染色物を得る目的で、収穫後の藍葉を酸素量の異なる条件で冷凍保存し、染色を行なった。冷凍保存時の酸素量によって赤色系の色素であるインジルビンの生成は助長されることを明らかにしたが、実験の中途で藍葉の保存のために使用していた冷凍冷蔵庫が故障し、冷凍葉が解凍された状態となった。そのため、色素抽出を行なうことが出来ない時期があり、学校での実践を想定し十分なデータを得ることが困難となった。そのため、予定していた設備の購入、染色の補助、授業実践時の補助の雇用を十分行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度には、購入した冷凍冷蔵庫に藍葉を冷凍保存し、今年度捉えることに出来なかった保存期間とインジルビンの生成量との関連について再検討を行い、さらに、幼稚園児、小学生、中学生を対象として、発達段階に応じた実践を想定して、その教材化を具体的に構想する。さらに、他教科の教科書の分析を進め、横断的教材の原案を作成する予定である。
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Research Products
(3 results)