2017 Fiscal Year Research-status Report
生活と自然と科学をつなぐ学校教育における藍草の活用
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15K04454
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
瀬戸 房子 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (00179350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 藍 / 生葉 / 染色 / ダンス / 寸劇 / ペットボトル / 毛糸玉 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの2年間で蓼藍の遮光や肥料に関する栽培方法および藍葉の採取時期と生葉染めを行なって被染色物の発色状態を調べた。そのデータを基に鹿児島大学附属幼稚園と鹿児島県内の中学校において栽培から染色までを行なった。それぞれに施設内において栽培した藍葉を7月に園児または生徒が収穫し、所定の比率で生葉と水をミキサーに入れて撹拌し、染料溶液を作成した。園児を対象とした染色では、染色、酸化に要する時間中の興味・関心の低下を避けることを念頭において、音楽に合わせてダンスをしながら振ることとした。染色の作業には、身近で手に持つことが可能な密封容器であるペットボトルを用いて、その中に染料溶液と被染色物を入れて染色物を得た。酸化のために放置する時間に色素、酸素、水を登場させる寸劇を考案、上演した。寸劇の中で園児にダンスの後に一定時間待つ理由と水洗の必要性を説明した。寸劇の中で染色物の発色には水によって不純物を除去する必要があることを学び、染色後には進んで水洗していた。また、ダンス染色によって自力で染色したという愛着からと思われるが、後日催された遠足で、染色物をリュックに付けるなどして身につけていた。中学生を対象とした染色は家庭科の授業として行ない、通常の染色工程で染色を行った後、生活に役立つ作品を製作した。授業後、アンケート調査から自然の植物から生活資材に色をつけるという驚きとそれを活用する楽しさが読み取れた。 藍の生葉染めを通して、発達段階に応じた指導内容を構築することで、生徒自身が自分を取り巻く生活環境や社会と自然や科学がどのようにつながっているかを考え、物事に対する意欲、関心を高める教材として効果的であると考えられる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
幼稚園児、小学生、中学生を対象として、発達段階に応じた実践を想定して、その教材化を具体的に構想する予定であったが、幼稚園、中学校においては生葉染めによる実践授業を行なうことができた。本研究で考案した発達段階に応じた方法による藍染めを行なうことで、自分を取り巻く生活環境や社会と自然や科学がどのようにつながっているかを考え、物事に対する意欲、関心を高める教材として効果的であることを確認した。 しかし、小学校における実践が行なえておらず、さらに、他教科の教科書の分析を進め、横断的教材の作成が中途となっている。また、染色実験に関しては、これまでの研究で冷凍保存時の酸素によって赤色系の色素であるインジルビンの生成は助長されることを明らかにしたが、色彩色差計が使用不能となり、藍の収穫時期は限られているため、染色物の測定ができず、作品の実用性の検証を十分に行なうことが出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
藍染めの実践を小学校において行ない、本研究において考案した発達段階に応じた指導内容の検証と再考を行なう。さらに、他教科の教科書の分析を進め、横断的教材の作成を行なう。 また、染色実験に関しては、インジルビンによる赤色系の染色条件を再検討し、授業実践を想定して、藍葉中で生成される色素の同異体について考えさせ、自然の不思議を体験し、科学に興味を持つ姿勢を育てる指導する教材を構築する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)幼稚園、中学校で行なう藍の生葉染めの授業案を構築して実践まで進めたが、実践には大量の藍葉を使用することが予測されたため、赤色系の色素を得るための冷凍保存用の藍葉の確保が十分ではなかった。さらに、色彩色差計の発光部分が故障し、染色物の測定ができなかった。 (使用計画)本研究申請時に現有であったものと同等の機種を今年度に購入し、インジルビン生成のための十分な藍葉を栽培し、染色して染色物の色彩を数値として捉える。その上で、保存期間とインジルビンの生成量との関連について再検討を行い、生葉染めとの違いや色素生成のメカニズムについて学習者の興味を引く指導を念頭に指導内容を構築する。
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