2016 Fiscal Year Research-status Report
グローバル時代における家庭科教育での多文化共生教育の推進
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15K04459
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
上野 顕子 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (20350952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 葉子 千葉大学, 教育学部, 教授 (30282437)
星野 洋美 常葉大学, 教育学部, 教授 (50267845)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カナダ / 中等教育学校 / 家庭科 / 食文化 / 多文化共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まず5月にカナダに行き、中等教育学校段階で家庭科の科目を担当している教員に聞き取り調査を行った。また、実施が可能となった学校のみでだが、授業観察を実施した。カナダの学校教育において、家庭科という教科を持たない州もある中、ブリティッシュ・コロンビア州(以下、BC州とする。)は、Home Economics(家庭科)という教科名を堅持している州である。そこで、このBC州の中等教育学校段階における家庭科の科目の1つであり、ほとんどの学校で開設している科目‘Foods and Nutrition’を担当する(していた)教員6名に対して、多様な文化背景をもつ生徒に対して、多文化共生をどのように教えるかについて聞き取り調査を行った。 日本では、ごはんと味噌汁を日本の食文化の基本として小学校から教えることを説明し、「自分の国の食文化として、何を基本として教えているか」を尋ねた。これに対し、各教員から「カナダは多文化国家である」ことが語られ、カナダの典型的食物と考えられている食物はあるものの、それをカナダの食文化の基本として教えることはしていないという回答を得た。一方、各地域の気候風土の特徴から多く栽培され、よく食されるものを、その地域の食文化という捉え方で教えているということが複数の教員から示された。また、各家庭での基本料理を挙げさせるというアプローチも紹介された。このように、国というより地域や家庭での食文化に着目させていることが分かった。また、「食の授業を通して、多文化共生をどのように教えているか」については、例えば世界に共通して存在するお茶や料理に使われるスパイスを取り上げ、その相違点と類似点を探るなどのアプローチにより多文化共生の視点で授業を展開していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度に実施を計画していた3つの事項を達成することができた。1つ目は、カナダでの調査実施である。これにより、上記の研究実績の概要に示した結果を得ることができた。2つ目は、日本での授業開発である。カナダの食文化に関する家庭科教育事例から学んだことを元に、日本の中学校技術・家庭科家庭分野の授業で実施可能な学習指導案と教材を考案した。3つ目は、研究成果の中間発表である。2015年度のおこなった日本の家庭科教員に対する聞き取り調査については、2016年8月に韓国の大田市にて開催された第23回国際家政学会にて口頭発表をおこなった。また、この内容をまとめた論文を金城学院大学論集社会科学編に発表した。カナダでの調査結果は、2016年12月に東京で開催された日本家庭科教育学会2016年度例会において口頭発表をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、以下3つの事項を実施予定である。1つ目は、カナダの食文化に関する家庭科教育事例から学んだことを元に考案した学習指導案と教材を日本の中学校技術・家庭科家庭分野の授業で実施し、その効果測定調査を行うことである。2つ目は、研究成果の発表を行うことである。まず、2016年度に行ったカナダでの調査結果を論文としてまとめ日本家庭科教育学会誌に投稿する予定である。また、本年度行う日本の中学校技術・家庭科家庭分野での授業研究については、2017年12月に開催予定の日本家庭科教育学会2017年度例会において口頭発表をおこなう予定である。3つ目は、3年間の研究成果を元に、家庭科教育における多文化共生教育実践のための手引書を作成し、関係教育機関等に配布する計画である。
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Causes of Carryover |
統計解析ソフトは2017年度に使用することになったため、2016年度予算では購入しなかった。外国旅費や国内旅費は、他の研究費を利用し、経費削減をおこなうことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度の調査において必要となる統計解析ソフトや録画機器、調査補助アルバイト謝金の支払いに充てる計画である。
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