2015 Fiscal Year Research-status Report
シュルレアリスムの視点から「イメージの借用」を展開する幼児の描画発達の実践的検証
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15K04465
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
小田 久美子 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 准教授 (10461229)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 図式 / 芸術教育 / 描画発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
白い画用紙を前に、何も描き出せない子どもがいる。白紙に絵を描くことに逡巡する子ども達を一人でも多く救う手だてを講じることは、教育・保育現場にとって急務であると言える。そこで幼稚園と大学の連携により、子どもの描画発達を促進する支援の推進を喫緊の課題として研究を進めてきた。結果、描画発達の停滞を打破するには言語的刺激と他者からイメージを借りる「イメージの借用(borrowing images)」(B.&M.Wilson・1987)という視覚的刺激が突破口になるという結論に達する。 本研究の目的は、これまでの基盤研究をもとに、描画発達への効果が期待されるシュルレアリスム作品を利用して、イメージの生成に寄与する活動を臨床応用するための実践的研究を行い、妥当性の検証を進めることである。平成27年度は文献研究と並行して、幼稚園教諭との連携のもとで、保育者の人的環境としてのあり方・役割に関する検討をしながら、造形カリキュラムの策定を行い調査を実施した。調査・観察をした対象者は、ノートルダム清心女子大学附属幼稚園の園児で、分析の視点と分類項目にしたがって年齢別に整理・分析・考察した。 具体的な内容としてまず、子どもの絵画的表象の発達を「図式獲得と抑制」の見地から整理する。次に、芸術領域を応用した環境として、絵画的表象の活性化を目指した二つの刺激の有効性について考察する。一つ目は作品の鑑賞を行うことによる言語的刺激、二つ目は芸術作品の一部の輪郭線を用いた視覚的刺激である。言語的・視覚的刺激をうまく取り入れることで、図画工作科へのスムーズな接続が期待される幼児造形教育を論究した。 研究成果は、研究論文「「図式」獲得と抑制にみる言語的・視覚的刺激の可能性」として、平成28年3月発行の美術科教育学会誌『美術教育』にて発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画・方法に即して、美術教育・描画心理学に関連した文献の検索・資料整理を継続的に進めながら大学附属幼稚園で3か月に亘りデータを収集し、その分析と考察を行った結果をまとめて研究論文を発表していることから、研究の進捗状況は良好であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度の研究で得られた知見をもとに、シュルレアリスム絵画の作品や技法から効果的に子どもの描画発達を引き出すよう配慮された援助方法を導くために、芸術作品を用いた造形カリキュラムを構築し、同じく附属幼稚園の園児によりその効果について継続的かつ総合的に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
おおむね計画通りに使用しているが、本年度の交付決定額より使用額が少ない主な理由は、資料整理の学生が段取りよく作業を仕上げたことによって人件費を削減することができたことである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の助成金は、交付申請書の計画にしたがって適正にこれを使用し研究を遂行する。
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