2015 Fiscal Year Research-status Report
大正期国語教育実践における文学教材の役割に関する実証的研究
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15K04467
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| Research Institution | Tokai University Junior College |
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Principal Investigator |
山本 康治 東海大学短期大学部, その他部局等, 教授 (10341934)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 公美子 (北川公美子) 東海大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (00299976)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 国語教育 / 文学 / 幼児教育 / 修身 / ヘルバルト / 童話 / 小学校 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
大正期国語教育の文学教育の興隆は、その源流をヘルバルト派教育学に見ることが出来る。本課題研究では、同教育学の影響を受け、文学教育の目的を修身的「教訓・訓戒」から「情操の涵養」に転換していった過程（研究系列Ａ）、またそれに応じる形で同教育学の示す五段教授法を範型とする教授法が教育実践の場に浸透・展開していった過程（研究系列Ｂ）、更には、文学教材受容の際に重視された「想像」活動が幼児教育の分野にも展開していた実相を実証的に明らかにすること（研究系列Ｃ）で、同教育学を基盤とした文学教育が大正期言語教育全般に与えた影響を検証し、当時、そして昭和期も含めて日本人のメンタリティ形成に与えた影響を明らかにするとともに、現代まで繋がる日本近代化の系譜の一端を明らかにするものである。
平成２７年度は、研究系列Ａでは、国語科文学教材の目的形成過程において、修身科の示す「教訓・訓戒」との関係性を踏まえて、「情操への涵養」が教育実践の場でどのように認知されていったのかを把握するため、東京高等師範学校と同附属小学校の言説を実証的に検証した。また、幼稚園教育についても、小学校教育との連続性を踏まえ、同様の調査を行った。
研究系列Ｂでは、ヘルバルト派教育学の五段階教授法を範型とする教育方法が、大正期の「児童中心主義」形成にどのように関わっていたのかを明らかにするため、教育実践の場における教授法の変遷について調査を行った。明治期に同教育学の導入・展開が進んだ北海道教育界の大正期における展開を中心に調査を行った。
研究系列Ｃでは、教育における文学受容の際の「想像」の在り方に焦点を当て、共時的、通時的観点から広くその実相を捉えるため、当時の小学校教案、幼稚園教案、教育雑誌等に示される文学教材に関する記事等に対する調査を行った。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成２７年度における研究系列毎の進捗状況は以下のとおりである。
研究系列Ａについては、大正期国語科における文学教育の目的形成過程の把握に向けて、国語科教育と修身教育との関係性に関する先行研究を行うとともに、東京高等師範学校（筑波大学）の所蔵図書資料等を調査し、修身科国語科を巡る言説と同附属小学校での修身科、国語科の両教授細目における文学教材の取扱い等の資料の収集、分析を行った。国語教育と修身との関係性について明治期からの連続性も視野に収めて分析を行った結果、明治期美文と国語教育における「情操の涵養」の方向性に相互補完的関係がみられることが明らかとなり、今後、大正期における、国語教育と美文との関係についても検討を進めることが必要となった。また、幼稚園教育に関しては、大正期幼稚園教育における童話、お話の教訓性把握のための基礎的作業として、明治期末の童話、お話における修身的「教訓・訓戒」と「情操の涵養」の在り方に関する調査研究を行った。
研究系列Ｂでは、ヘルバルト派教育学の五段教授法を範型とする教授法が教育実践の場に浸透・展開していった過程の解明に向けて、同教育学が浸透した北海道教育界を中心に、実践事例（教育雑誌、教案等）、幼稚園教育における同教育学実践事例の収集、分析を行った。なお、予定していた奈良教育界に対する調査については、関連大学図書館の改装等の事情のため、平成２８年度からの開始に改めた。
研究系列Ｃでは、国立国会図書館等を中心に、小学校（低学年）における童話・韻文の教育実践事例、幼稚園における童話、お話し等の教育実践事例に関する資料収集、分析を行った。その結果、童話を通した美観の形成について、明治期末から、大正期にかけて積極的に推進しようとする動きがあったこと、また、後の負の側面（海外進出、戦争等）に繋がる内容についても、この時期から併存していることが確認された。
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| Strategy for Future Research Activity |
研究系列Ａについては、国語科教育と修身教育との関係性に関する先行研究課題の整理を引き続き進めるとともに、国語科文学教材の教訓性の取扱いに関する調査研究（継続）、幼稚園教育の童話、お話の教訓性の取扱いに関する調査研究（継続）を通して、大正期国語教育における文学教材の役割を明らかにする。また、特に美文と国語教育との関係性についても検証を進める。そのため、筑波大学附属図書館、国立国会図書館での調査研究を実施する。
研究系列Ｂについては、引き続き北海道教育界（幼稚園教育含む）における同教育学実践事例（教育雑誌、教案等）に関する調査研究を行うとともに、新たに、奈良県教育界（幼稚園教育含む）における同教育学実践事例（教育雑誌、教案等）に関する調査研究を行い、大正期国語教育実践に係るヘルバルト派教育学の実践的影響に関する研究を推進する。そのため、北海道教育大学附属図書館札幌館入、奈良女子大学学術情報センター、奈良教育大学附属図書館、国立国会図書館等での調査研究を実施する。
研究系列Ｃでは、小学校（低学年）における童話・韻文の受容に関する調査研究（継続）、幼稚園における童話、お話し等の教育実践事例に関する調査研究（継続）を進め、これらを踏まえて、大正期教育実践の場における童話、韻文等の受容に関する調査研究を行うことを通して、文学教材の受容とナショナリズムに関する研究を推進する。そのため、筑波大学附属図書館、国立国会図書館での調査研究を実施する。
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