2017 Fiscal Year Research-status Report
アート学習を活かしたインクルーシブ教育システム構築の基礎的研究
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15K04483
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
茂木 一司 群馬大学, 教育学部, 教授 (30145445)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インクルーシブ教育システム / アート教育 / ワークショップ / カリキュラム・教材・ツール開発 / アールブリュット / 美術館や教育委員会との連携 / 障害理解教育 / 視覚障害美術教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
I.アートを活かしたインクルーシブ教育システム構築の基礎理論構築のための文献調査及び国内の先進的地域の調査では、アトリエコーナス(大阪市)、当事者研究全国交流集会(浦河べてるまつりの家)、「山下清とその仲間たちの作品展」(川崎市民ミュージアム)、「ポコラート全国公募展vol.7」(3331アーツ千代田)、障害者芸術フォーラム(六本木ヒルズ)、「TURN」展等を調査した。それらを含み、研究成果「インクルーシブアート教育システム構築のための覚え書き1・2」(群馬大学教育実践研究誌、2015-2016)を発展させ、社会を包摂(インクルージョン)することとは教育のアート化だと考えた「同3」を基礎研究として発表した。しかし、日本におけるインクルーシブ教育への道は遠く、実践を担う現場の声は芳しくなく、今後の課題として残された。 II.前橋市におけるインクルーシブ教育支援組織構築は、アーツ前橋と前橋市教育委員会及び群馬大学教育学部美術教育講座等によるアーティスト・イン・レジデンス事業がアートと社会をつなぐ意味を明らかにし、また広瀬川美術館におけるインクルーシブアート展「こころのかたち」展などが、共生社会における芸術の機能を考える機会を与えた。 III.教材開発については、国立特別支援教育総合研究所(視覚障害鑑賞教育:大内進)、サマーアートスクール2017:視覚を超える造形ワークショップ(筧康明)、音で観るダンスのワークインプログレス(神奈川芸術劇場)、京都大学バリアフリーシンポジウム2017の調査及び廣瀬浩二郎@群馬県立盲学校の実践が視覚障害美術教育の問題点を明確にし、次の全盲児者の美術教科書作成に発展した。 また、つくば市民大学「アートの学びがつくるインクルーシブな社会の可能性」(つくば市)の講演・WSの実践から、社会における障害理解教育にアートが果たす役割について考察することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Iのインクルーシブアート教育論構築の基礎研究については、おおむね順調に進んでいる。ただ、外国の調査が大学の業務等の多忙のために、実地調査が一昨年の国立ソウル盲学校だけになっていて遅れ気味である。その理由には、世界的にインクルーシブ教育が進み、特別学校が閉鎖されている現状もある。IIも新しく学校現場における社会包摂的なアート教育の取組である「アーティスト・イン・レジデンス(AIS)事業」、福祉関係者との研究会などを通じた共同研究体制が構築できつつある。IIIは、やや遅れ気味であるが、次の課題は明確になりつつある。最近のハイテクなメディア・テクノロジーを活用した触覚やVR(ヴァーチャル・リアリティ)など、仮想と現実(実材)を組み合わせたインターラクションは障害を支援できる可能性が大いにある。同時に、アート教育自体を拡張し、ダンスや演劇など、身体による双方向の総合的な学習(鑑賞も含む)に可能性を感じる。 インクルーシブ教育システム構築が大きくは進展していない現状で、インクルーシブアート教育(障害児者を含む)分野では歴史的にも研究層が薄く、点的な興味関心を線や面、さらに立体にまで拡張していく必要があり、少ない研究者に横のつながりをつけるような研究組織自体の構築を進めているので、時間はかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
I,II,IIIにはそれぞれ残された課題や発展できる研究や実践の新しい芽が少しづつ明確になりつつある。今回の基礎研究では、強い理論構築のために文献等の調査を障害等の現場を尋ねることによって、体験的身体的な知に変えていくことに重点を置いたが、それらをさらに俯瞰してみると、教育、医療・福祉、アート等、人間の活動すべてに共通性があり、その土台(うつわ)に個性(多様性)が混交していることがわかる。多様性の時代こそ、共創社会であり、共同社会であることは遠回りでも、まず教育が担う必要があるが、学校教育だけを教育とする分断された現代社会を再考し、全体をつなぎなおす役割を持つアート/教育のよりエッセンシャルな活動を具体的に提案できるように、それぞれの研究目的の課題を深めていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者の大学での日常業務(授業、校務分掌、地域貢献など)が多忙であることから、当初計画の遂行が遅延したため。特に、「文化庁と大学・研究機関等との共同研究事業」と重なるなど、研究計画が全体的に遅れ気味になって、海外調査等が十分にできなかった。 これらの不足分を補うように、国内及び海外調査等を実施する予定である。
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Research Products
(19 results)
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[Book] 美術教育学からの現在から(美術教育学草書① 美術科教育学会叢書編集委員会 永守基樹責任編集)2018
Author(s)
永守基樹,藤江充,藤原智也,奥村高明,岡崎昭夫,新井哲夫,笠原広一,茂木一司,佐藤賢司,神野真吾,山木朝彦,大嶋彰,小野康男,辻政博,宇田秀士
Total Pages
208
Publisher
学術研究出版
ISBN
978-4-86584-309-5
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