2016 Fiscal Year Research-status Report
高大連携による「21世紀型能力」育成を目指す世界史単元開発とデータベース化
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15K04511
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
田尻 信一 目白大学, 人間学部, 教授 (10436800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 孝志 目白大学, 人間学部, 名誉教授 (50341920)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 21世紀型能力 / 高大連携 / 世界史カリキュラム / 持続可能な発展のための教育 / 世界史授業アーカイブ / 探究的世界史学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の田尻信一は、新潟県(2016年6月、新発田中央高校、日本史B)と愛知県(2017年2月、日進西高校、世界史A、B)で歴史授業の参観と記録化を行った。前者の授業は、新潟県内から発掘された木簡の読み解きを通して、史料活用力の育成を目指した探究型授業であった。後者の授業は、事前に用意された課題をグループ単位で協議してクラス全体で共有化を図ることを目指した反転授業であった。 また、田尻は、21世紀型能力を鍵概念として歴史的思考力を検討して探究的世界史学習論としてまとめた(研究題目『探究的世界史学習論の研究-史資料を活用した歴史的思考力育成型授業の構築-』)。そして、同研究を博士論文として日本女子大学大学院人間社会研究科に提出し、2017年3月に博士の学位を授与された。同論文において、4つの世界史単元を開発して提案した(単元題目は「現在までの進捗状況」を参照)。 さらに、田尻は、収集・記録化した歴史授業のデータベース化を目指し、研究成果を公開するために、2017年2月にホームページ(「世界史授業アーカイブ Archives of World History Lesson」:http://www.archives-whl.jp/index.html)を開設した。ホームページ上に、世界史を中心とした日本内外の中等教育段階の歴史授業を文書化して紹介した(授業アーカイブ・日本、授業アーカイブ・外国)。また、同ホームページ上に、歴史授業つくりに役立つ情報、資料、論文・報告を掲載した。 研究分担者の多田孝志は、21世紀型能力に関する文献研究を進め、2016年5月に「グローバル時代の対話型授業の研究」の紀要を刊行した。また、2017年1月には、武蔵大学において「21世紀の教育における教員の役割」について報告し、その中で高大連携による世界史を重視した教育の必要性を主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年2月に、本研究のためのホームページ(「世界史授業アーカイブ Archives of World History Lesson」http://www.archives-whl.jp/index.html)を開設し、授業アーカイブを公開して本研究の成果を発信している。ホームページ上に公開している内容は、授業アーカイブ(日本・外国)、活動報告、授業で使える史資料、研究成果(論文・報告)である。 また、研究代表者の田尻は、21世紀型能力を鍵概念として歴史的思考力を検討して、探究的世界史学習論としてまとめた(論文題目「探究的世界史学習論の研究-史資料を活用した歴史的思考力育成型授業の構築」)。同論文では、以下の4つの世界史単元を開発して提案した。開発した世界史単元を以下に列挙する。(1)考古学史資料の活用による授業構成モデル-単元「新安(シナン)沖沈船の積み荷から見た14世紀構想-。(2)博物館史資料の活用による授業構成モデル-単元「『大航海時代』以後の人の移動やもらしたか?!」の構想-。(3)図像史資料の活用による授業構成モデル-単元「19世紀米国南部諸州の紙幣に描かれアフリカ系アメリカ人のイメージ」の構想-。(4)地図史資料の活用による授業構成モデル-単元「黒死病と14世紀の世界」の構想-。どの授業モデルも、コンピテンシー・ベースの世界史カリキュラムである。 研究分担者の多田は、21世紀能力をグローバル時代の対話論の視点から研究を進め「グローバル時代の対話型授業の研究」(紀要)としてまとめることで、本研究の理論構築に努めた。また、その成果を講演や発表などを通じて、精力的に発信した(2016年11月武蔵大学、2017年2月常葉大学、同年3月JICA)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本研究の最終年度なので、平成27年度・平成28年度の研究成果を土台として、以下の研究を推進する。まず、「21世紀型能力」に関する理論研究をさらに進めるとともに、先進的な地歴科世界史授業の参観およびビデオと文書での記録化を行う。その際、データベース化した授業をコンピテンシー・ベースのカリキュラム研究の視点から分析を行う。収集した授業記録は開設したホームページ(世界史授業アーカイブ)に文書化(PDF)して公開し、情報の発信に努めることにする。次に、9月に海外での授業調査を実施し、先進的な授業の収集と記録化(ビデオ・文書化)を進める。その成果をホームページにアップして、世界史授業のデータベース化を進める。そして、研究成果の発信と普及に努める。海外調査では、AHA(アメリカ歴史協会)等の国際学会に参加して、歴史学習の国際的潮流を調査し、その成果を取り入れるように努める。さらに、平成27、28年の研究成果をもとに、21世紀型能力の育成を目指した世界史単元開発を行い、ホームページへの公開を通じて、研究成果の普及を図っていく。最後に、「21世紀型能力」に基づく世界史の単元開発をテーマに教員を対象としたワークショップを開催し、研究成果の発信と共有化を図る。また、その成果を教科教育(社会科教育、地歴科教育)系学会で発表・報告する。研究代表者の田尻は平成28年に提出した学位論文『探究的世界史学習論の研究-史資料を活用した歴史的思考力育成型授業の構築-』を刊行(2017年12月出版予定)し、研究成果の公開と普及に努める。
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Causes of Carryover |
次年度に使用額が生じた理由として、以下の3点を挙げる。まず第一に、2016年度に実施する予定であった海外調査と学会出席が、学内校務と重なり実施できなかった点である。海外調査と学会出席は、本研究を進める上で必要不可欠な計画である。そのため、2017年度に実施する必要がある。第二に、2016年度に記録した授業データ(映像・音声データ)の「テープおこし」と文書化が未処理である。研究資料として、ホームページに公開するためには、データの「テープおこし」と文書化・PDF化することが必要である。第三に、レーザープリンター、スキャナー等の機器を2016年度に購入する予定であったが、適切な機能を備えた機種がなかったため、購入を見送った。そのため、2017年度発売の新機種のなかから選定して購入する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、海外調査と学会出席を2回、実施する計画である。時期としては、2017年9月、2018年2月を予定する。海外調査の研究成果については、速やかにホームページに公開する。これまで収集した授業データ(映像・音声データ)の「テープおこし」については、次年度早期に業者に発注する。また、「テープおこし」と文書化(PDF化)ができたならば、速やかにWEB管理会社にホームページの更新(新データのアップ)を依頼して公開する予定である。2016年度に購入を予定していたレーザープリンター、スキャナー等の機器を2017年度の早期に購入する。最終年度に実施するワークショップでの資料作成や授業データの記録化のために使用する。
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Remarks |
本ホームページ(世界史授業アーカイブ:Archives of World History Lesson)は、世界史を中心とした日本内外の中等教育段階の歴史授業を収集して記録化し、紹介するために開設したものである。また、歴史授業つくりに役立つ情報、史料、論文・報告書なども掲載している。
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