2016 Fiscal Year Research-status Report
自己肯定感を促進する地域的ナラティブ形成に関する国際比較研究
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15K04512
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
長濱 博文 目白大学, 人間学部, 准教授 (00432831)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域的ナラティヴ / ナラティヴ・アプローチ / 自己肯定感 / 国際・地域間比較 / 持続可能な開発のための教育 / 道徳教育 / 防災教育 / 環境教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、普遍的価値教授を通して、震災・紛争を経験した地域において、その学習効果による伝統的価値の活性化による地域の連帯や家庭との連携による影響、特に生徒の自己肯定感の涵養への肯定的影響について実証的に比較分析することを目的としている。研究実績としては、研究の基礎となる社会構成主義におけるナラティヴ・アプローチの位置づけについての理論的研究、及び平成28年に現地調査を行った釜石市の現地調査の分析を行い、論文投稿ができたことである。 ナラティヴ・アプローチの分析においては、文献研究が中心であったが、カウンセリング、心理分析の新たな方法論である同アプローチには応用、援用の余地が十分にあるだけでなく、現在学校現場で注目されているアクティブラーニングにおいても、主要な方法論として、教育の方法論としても導入可能であると分析できた。 更に釜石市の現地調査において、釜石市の防災教育は、防災教育のレベルに留まらず、「生命の教育」として再解釈、再編され、震災後の児童・生徒の心のケアも視野に入れ、岩手県の教育指針とも連動するとともに、「防災教育」の新たな段階を提示していることが理解できた。上記のナラティヴ・アプローチの観点から、釜石市をはじめ、他の震災を経験した地域の調査分析にも応用していくことが求められる。比較対象国のフィリピンについては、日本在住の専門家へのヒアリングを行ってきたが、本年度は交流を得た専門家および同専門家の所属するNGO団体の協力も得て、フィリピンの現地調査を実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、現地調査の蓄積により、国家間比較に必要な質的及び量的データの蓄積を行う予定であったが、比較対象を行えるまで現地調査のデータの蓄積を実施することができなかった。大学内の業務の中で、現地調査を重ねる時間管理が上手くできなかった。研究以外の面での課題が明らかとなった。研究実績を大学教育に還元しながら研究を進めるレベルにまで上げることが求められていると考えている。その上で、全ての調査項目を一人で実施する事に固執するのではなく、防災教育の専門家の意見やアドバイスを踏まえながら、また、必要があれば専門家と活動期間を共にして、研究の進め方を早急に再検討し、成果として提示出来るように計画を見直す必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の会議やシンポジウムへの参加を通して、複数の防災教育に携わる専門家やNGO関係者、および研究者との面識を得た。これらの方々の協力を得て、現地調査による研究と分析を継続していく。その上で、防災、生命、道徳教育をつなぐキー・ワードに関する量的調査の観点を整理し、現地調査と併せて実施し、今後の道徳教育研究に貢献できるように整理する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、当初の計画であったフィリピンの現地調査を十分に行うことができなかった為に繰越し金が発生した。また、現地調査の継続とともに、成果としてまとめることを念頭にした現地調査の方法論の再検討および分析が不十分であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、比較対象国であるフィリピンの現地調査を3度実施すると同時に、質問紙調査による量的分析および参与観察による質的分析を同時に行う。また、分析に関しては、専門家のアドバイスを受けて、より多くの学校現場の先生方に成果が提示できるように、現在の学習指導要領における道徳教育の教育内容を踏まえた提示方法を工夫する。
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