2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K04516
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
下田 好行 東洋大学, 文学部, 教授 (70196559)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホリスティック / シュタイナー / 人智学 / 緑の蛇と百合姫のメルヘン / メルヘン / 人間の生きる目的 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホリスティックな視点に立つ道徳教育を研究した。ホリスティックな視点に立つ教育実践として、シュタイナー教育をとりあげた。シュタイナー教育では、道徳教育を学校の教育活動全体の中で行っている。とりたてて「道徳」の時間はない。 シュタイナーの道徳教育論は「感謝、愛情、義務の徳」「道徳的想像力」「倫理個体主義」に代表される。シュタイナー学校の道徳的側面の授業実践では、詩の朗誦、語り聞かせ、劇の上演、寓話と聖人伝説、聖書、オイリュトミーなどがあげられる。この中で、「メルヘンの語り聞かせ」はシュタイナー教育の特徴で、シュタイナー幼稚園の頃から行われる実践である。主にグリム童話(メルヘン)を扱い、教師は淡々と語り聞かせを行う。絵本の読み聞かせをすると制作者の意図が直接子どもの内面に伝わる。ゆえに、道徳的想像力を重視するシュタイナー学校では、語り聞かせが採用されているのである。メルヘンに関しては、ユング派は「普遍的無意識の元型」がメルヘンに投影されていると考える。シュタイナー派は「宇宙の古い霊的な神秘の表現」が投影されていると考える。シュタイナーはもともと人智学協会を主宰する宗教家であり、人間は物質ではなく霊的な存在と捉えている。人間は「体」「魂(心性)」「霊(精神)」で構成されており、自己の魂が進化・発展していくことが人間の生きる目的であるとしている。シュタイナーは、メルヘンにはこの現実社会から超感覚的世界へと魂が進化していく過程がよく表現されていると言う。これはゲーテの書いた「緑の蛇と百合姫のメルヘン」の中でも確認できた。ここにシュタイナーのメルヘンに関するホリスティックな解釈が表れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シュタイナーの道徳教育の特徴として、シュタイナーの思想的根幹である人智学の思想を明らかにした。シュタイナーの人智学思想は、人間を部分的に、機械論的に捉えるものではなく、人間の無意識的領域をも含んだ、全体的に捉えるものである。そうした意味でたホリスティック視点に立つものであると言える。今回の研究では、シュタイナー教育の道徳教育の特徴である「メルヘン」の語り聞かせの意味を人智学の視点から明らかにした。 こうしたホリスティックな人間の内面性の形成はシュタイナー教育だけでなく、スウェーデンの「森の幼稚園」の教育実践の上にも表れている。今年の研究では、シュタイナーの道徳教育研究だけではなく、こうした教育界に浸透しているホリスティックな側面の調査も行うことができた。具体的には、スウェーデンのウプサラにある「森の幼稚園」の教育実践の調査も行うことができた。 さらに、こうしたホリスティックな視点は、人類の幸福を地球全体の視点から追究するESD教育の中にも見ることができる。今年の研究では、人間の内面性、とりわけ倫理観の形成の研究にも発展することができた。ナチスの迫害からからユダヤ人を救った杉原千畝の研究への発展に結び付けることができた。 このような理由から、今年の研究の進捗状況は、おおむね順調に推移していると考えることができる。 このような理由から、今年の研究の成果は、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
シュタイナーは人間の内面性の発達を学校教育の教育実践の中だけでなく、人間が生を受けた軌跡全体の中で捉えている。時間軸を超えた超感覚的な世界観を持っている。こうした世界観が如実に反映されているシュタイナーの著作に「神秘劇」がある。シュタイナーの「神秘劇」を研究し、そこに表れているシュタイナーの人間の発達と進化のありようを明らかにしたいと考える。人間はどのようにしてその内面性を進化、成長させていくのか、それを時間軸を超えた、超感覚的な世界観、人智学の視点から追究していきたいと考える。そのために、実際に「神秘劇」も観劇したいと考えている。これをもって、ホリスティックな視点に立つ道徳教育の研究としたい。
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Causes of Carryover |
今年、シュタイナーの神秘劇の調査、資料収集で、スイスのドルナッハに行くつもりであったが、私の予定の神秘劇上演の日程があわず断念した。このことで、次年度の研究費が増額した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、スイスのドルナッハの神秘劇の調査、資料収集に行く計画である。日程の関係上、不可能な場合は、ホリスティックな視点に立つ人権感覚の調査、資料収集を行うつもりである。
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Research Products
(4 results)