2015 Fiscal Year Research-status Report
通常学級での発達障害児童の行動問題に対する集団随伴性と個別支援の組合せ条件の検討
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15K04537
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野呂 文行 筑波大学, 人間系, 教授 (30272149)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 集団随伴性 / 応用行動分析学 / 特別支援教育学 / 通常の学級 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、相互依存型集団随伴性の導入による個別支援ニーズのある児童のスクリーニング効果の検討を行った(担当:研究代表者・大学院生2名)。相互依存型集団随伴性は、クラスルームマネジメントの手法 として、その効果が示されてきている。しかしながら、実際に、その適用によって、個別支援ニーズのある児童 がスクリーニングされるかどうかについて、厳密に検討した研究は存在していなかった。そこで本研究では、小学校中学年の複数学級を対象に、相互依存型集団随伴性を導入し、その結果、1)特別なニーズを有する児童の行動改善が観察されるかどうか、2)個別支援が必要な児童がスクリーニングされるかどうか、つまり行動改善が十分でない個別支援が必要な児童が見出せるかどうか、という点について検討することを目的とした。 具体的には、公立小学校の通常学級3年生の3学級とその担任教師を対象とした。標的行動としては、登校後から10分間の間、「 ランドセルをロッカーにしまう」「着席する」「連絡帳を書いて、教師の机の上にもっていく」という3つの行動を選択した。また、不適切行動に関しても観察を実施した。具体的な行動としては、離席・徘徊、他児へのちょっかい、手いたずらを対象とした。相互依存型集団随伴性手続きとしては、4人1グループの構成で標的行動の達成を目指し、記録用紙に基づいて、担任又は児童が棒グラフによるフィードバックで評価した。学級間多層ベースラインデザインを用いることにより、相互依存型集団随伴性の 効果の検討した結果、3学級共に、標的行動の改善が示された。また一部の発達障害児童においても、標的行動が改善し、不適切行動の減少が観察された。また集団随伴性の導入で標的行動の改善が示されなかった児童に対しては、個別支援を行うことで、行動改善が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、当初の予定通りに進んでいる。またおおむね仮説通りの結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
【目的】相互依存型集団随伴性を通常学級に導入する場合に、負の副次的効果(negative side-effect)が問題 となる。具体的には、グループ内でパフォーマンスが低いメンバーが存在している場合に、そのメンバーに対し て、非難等のネガティブな相互作用が生まれる可能性がある。プレアセスメントにより、標的行動の遂行率が著 しく低い対象児童が存在している場合、事前に個別支援を実施することにより、負の副次的行動の発生を予防す ることが可能になると考えられる。研究2では、集団随伴性導入前のプレアセスメントの実施により、標的行動 の遂行率の低い対象児童を特定し、個別支援を事前実施することで、負の副次的効果の発生を予防する効果を検 討する。 【方法】(1)対象:公立小学校の通常学級の4年生の約100名(3学級)及びその担任教師。各学級には、発達 障害の児童が1名以上、在籍している。(2)標的行動:体育科の授業開始時から15分間において、1)授業開 始時刻に集合場所で整列する、2)授業で使用する用具を準備する。(3)不適切行動:離席・徘徊、他児への ちょっかい、手いたずらを不適切行動とする。(4)手続き(プレアセスメント):1行動観察:30秒間のタイ ムサンプリング法を用いて、適切行動及び不適切行動の生起頻度を測定する。不適切行動については、機能的ア セスメントを実施する。2知能検査(WISC-IV)を発達障害児童に実施する。 (5)手続き(支援手続き)相互依存型集団随伴性手続き・個別支援・研究デザインは、平成27年度と同様の手 続きとする。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金に関する支出が、当初予定されていたよりも、少ない額になったために、このような使用額の差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の人件費・謝金を上乗せする形で使用する予定である。
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