2016 Fiscal Year Research-status Report
通常学級での発達障害児童の行動問題に対する集団随伴性と個別支援の組合せ条件の検討
Project/Area Number |
15K04537
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野呂 文行 筑波大学, 人間系, 教授 (30272149)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 応用行動分析学 / 特別支援教育学 / 集団随伴性 / 通常の学級 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は2つの方向性で研究を進めた。ひとつは集団随伴性の適用を含む、応用行動分析学に基づく通常学校・通常学級の支援のあり方を文献的に検討する方向性であった。通常学校・通常学級における応用行動分析学に基づく支援は、米国においては、幅広く研究が実施されている。一方で日本においては、研究数は十分ではない。応用行動分析学では、米国における効果評価の研究成果に基づいて、実証性を示すことが多い。しかしながら、学校場面への技法の適用を考えた場合に、米国と日本では教育制度等が異なるため、日本の学校内での効果評価が必要となる。そこで日本で実施された研究について文献的に検討した。その結果、1)特別支援教育システムが開始された2007年以降に研究論文数が増加していること、2)多くの研究が小学校を対象に実施されていること、3)学級マネイジメントの手法としては、集団随伴性の研究が多く実施されていること、などが明らかになった。これらの結果については、「The First Asia Pacific International Conference on Positive Behavior Support」での招待シンポジウムの中で、「Current Situation of PBS in Japan: Focus on Support for Students with Developmental Disabilities in Regular Classrooms」というタイトルで口頭発表した。 平成28年度の第二の方向性は、平成29年度に実施する実証研究の準備を進めることであった。研究対象となる学校を選定するために、複数の学校に研究協力を打診した。その結果、条件を満たす学校を選定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実証研究については、対象となった学校や研究協力者である大学院生の関係で中断する形になってしまったが、その分、文献的レビューについて進めることができた。また、平成29年度の実証研究の準備等も行うことができており、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は最終年度である。これまでの研究において、相互依存型集団随伴性を通常学級に適用することにより、その学級に在籍する発達障害児童の適応行動も特別な支援を実施することなく変容することがあること、また集団随伴性を適用しても標的行動の改善が示されなかった児童に対しては、個別支援を行うことで、学級に在籍する全児童の適応行動の生起が示されることが確認でした。集団随伴性は、他の支援手続きと組み合わせて実施することにより、より効果的な指導パッケージとして使用される場合も多い。そのような手続きのひとつとして、セルフマネージメント手続きがある。セルフマネージメント手続きでは、児童本人が自分自身の行動をモニタリングし、記録をとり、強化子を配置できるよう支援が行われる。平成29年度は、セルフマネージメント手続きにおける自己行動の記録に基づく集団随伴性手続きを導入することによって、自己記録の正確性が低下するかどうかについて検討する。もし正確性が低下するようであれば、それを防ぐための手続きについて、通常の学級を対象とした実証研究を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
大学院生のデータ収集等に関する謝金等の支出を予定していたが、研究計画の一部変更により、支出する必要がなくなった。そのために次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は実証研究を実施するために、データ収集等の作業が必要となる。平成28年度の未使用の予算額は、その用途で使用する予定である。
|