2015 Fiscal Year Research-status Report
軽中等度難聴児の言語処理機能のアセスメントプロセスと支援ガイドラインの構築
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15K04539
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
廣田 栄子 筑波大学, 人間系, 教授 (30275789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小渕 千絵 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (30348099)
鈴木 恵子 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40286381)
井脇 貴子 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (60387842)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 軽中等度難聴児 / 人工内耳装用児 / 言語発達 / 心理社会的発達 / 学校生活適応 / 早期介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究1,研究2】実態調査に関する研究(学童)については、両側軽中等度難聴児(MBHL)・片側難聴児(UHL)と、人工内耳装用(CI)児の言語処理能と学校適応と支援について検討するために、全国難聴特別支援学級および通級指導教室631施設に調査協力を依頼して実施した資料を解析した。難聴児303名について通常級の授業・会話についてMBHL児は43%、CI児76%は騒音下での聴取能低下を認め、MBHL児の情報支援対策の実施率が低下した。CI児ではMBHLと比べ、社会参加、言語表現力、社会共生態度に低下傾向があり、自律的態度・自己価値に群間差を認めなかった。 また、実態調査研究(幼児)については、MBHL児の言語発達状況について後方視的に解析し、乳児期早期介入開始により幼児期後期に良好な言語発達を示したことから、新生児スクリーニング検査(NHS)後の早期介入の重要性が示唆された。 【研究3】発達経過に関する研究(乳児)では、NHS検出MBHL児例について、NICU入院児とそれ以外(WBN)で長期経過を比較し、NICU児では補聴器適合に時間を要し障害重複により言語発達支援には専門教育機関での長期介入を必要とした。 また、MBHL児の補聴器助成研究では、法的助成制度がないことから助成状況の実態を調査し、自費負担が早期補聴介入の妨げとなる等、早期支援体制の進捗について検討した。一方で、CI児の言語機能発達のリスクについて経時的に観察し、装用閾値が軽中等度難聴相当と音検知の閾値は良好であるが、就学時の言語機能については個人差が大きく発達リスクに関与する要因については不明であり、次年度に検討を継続予定とした。 【研究6】言語評価尺度開発に関する研究では、MBHL児の言語機能の特徴解析に向けて、幼児期後期のナラティブ発達やメタ認知的発達等、就学前後期の言語機能評価の開発研究に着手した段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗は概ね順調であるが、以下の点については、次年度以降の研究の継続が必要と考える。 【研究1・研究2】学校適応に関する実態調査研究では、H27年度に両側軽中等度難聴児(MBHL)・片側難聴児(UHL)・人工内耳装用児(CI)の学校適応・社会適応スキル形成・学習達成度・支援状況などの領域についての調査資料を得ているが、結果解析(研究2)については、次年度以降に各種説明要因についての多変量解析等、研究進捗を必要とする。幼児期後期の言語機能領域に関する実態調査は継続予定である。
【研究3】発達経過に関する発達変容検討研究では、当初の研究計画に加えて、医療施設における後方視的調査により、就学前後期段階のMBHL児について、幼児期言語発達および、新生児聴覚スクリーニング検査後の早期介入効果について解析が進められた。次年度には、対象症例数を増加し長期経過観察による検討と、個人差を生じる要因解析研究によるMBHL/UHL児の発達特性に関する研究への展開を予定している。 人工内耳装用児の術後から就学時までの後方視的検討および、発達のリスク要因検討研究については研究協力体制の調整に時間を要したが、次年度の進捗に継続が可能な段階となった。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究1・研究2】実態調査研究結果の解析をさらに進め、MBHL/UHL/CI児について、①言語処理能、②学校適応(聞こえ・コミュニケーション・21世紀型学力評価)、③社会適応スキル・障害認識、④学校生活適応と支援の現状と課題状況に基づいた支援の方針策定を進める。 【研究3】発達変容研究では、MBHL児の介入時期や指導頻度などの解析を進め、幼児期の早期介入の具体的方針の策定に向けてエビデンスを集約する。研究1.2の就学期達成度と発達的変容経過についての関連性を解析することにより、長期的な支援体制の理論化に結び付ける。また、難聴診断と補聴介入を行ったMBHL児の発達変容については、学童期以降の当事者について長期経過観察を行い、乳幼児期の発達状況の影響について検討する。その経過での当事者評価を得て、支援の在り方について指針を得る。その結果、軽中等度難聴児のNHS後診断期から就学への移行支援の展望を可能にする。また、CI児の1年間の発達変容と課題について検討し、MBHL/UHL児との共通性と固有性について解析する。 【研究6】幼児期後期の言語発達評価法の開発を進める。 【研究4】青年期のMBHL/UHL/CI児を対象として面接調査を行い、学童期から青年期の学校適応と障害認識の発達的経緯についてデータを収集し、質的解析に基づいて理論化を行う。軽中等度難聴児の心理社会的発達支援の構造とプログラム化に向けた検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
1)今年度、計上していた非常勤雇用人件費については、H28年度の面接研究(研究4)後の録音資料処理を想定して、一部につき、別途研究費で対応した。さらに調査結果解析の実施が遅滞し、資料処理に必要とする雇用費用の執行ができなかったことによる。
2)人工内耳調査については、近年の人工内耳普及の事情を勘案して、本研究助成申請が進んだ段階で、急遽、分担研究者として参加を依頼した。カルテ記録の分析により後方視的な研究解析を行ったが、直接的調査については、対象地区施設と当該者のリクルートの調整段階にあり、予定していた直接経費の執行ができなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度に、調査1,2,3を継続して遂行し、H27年度予定の研究補助費の執行を計画通り、行う予定である。H27年度の研究実施については、概ね順調に進捗していることから、H28年度の予算執行計画の遂行は可能であると考えられる。
H28年度については、研究助成申請当初の研究計画書の通り、【研究3】追跡評価による発達的変容と支援の有効性の検討(廣田・鈴木・小渕・井脇)および、【研究4】MBHL/UHL青年における学童期学校適応と障害認識に関する後方視的検討(廣田・鈴木・小渕・井脇)を予定している。
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Research Products
(23 results)