2015 Fiscal Year Research-status Report
通級指導教室における言語面の支援ニーズに対応した指導方法の体系化と教材の開発
Project/Area Number |
15K04547
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
大伴 潔 東京学芸大学, 教育実践研究支援センター, 教授 (30213789)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 言語発達 / 通級による指導 / 学齢児 / アセスメント / 特別支援教育 / 通常の学級 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校の通級指導教室(学級)において言語面の支援を受ける児童の実態を明らかにするために、児童の主訴や認知・言語面の実態について情報収集を行った。言語面のアセスメント情報としては、LCSA(学齢版言語・コミュニケーション発達スケール)の結果を共通指標とした。1~4年生の76名について検討したところ、WISC-ⅢまたはWISC-Ⅳ知能検査による全IQは平均91.2(SD12.3)であった。LCSAの10の下位検査の評価点をもとにクラスター分析を行ったところ、現時点では以下の6つのクラスターに集約された:A.「音読」のみに顕著な成績低下のある群;B.「語彙知識」に低下のある群;C.「言語指示理解」と「柔軟性」は比較的良好であるが「音読」「読解」「慣用句・心的語彙」に低下のある群;D.「聞き取り文脈理解」「慣用句」は比較的高いがその他は低水準である群;E.「音韻意識」「音読」「対人文脈」が比較的高い群;F. どの言語領域も低水準である群。これらは、語彙、文表現、音読といった各児童の困難領域と概ね対応し、下位検査間の個人内差は、児童ごとの発達的アンバランスさを明らかにすることが示された。 言語により限局した苦手さを有する児童について検討するために、以下の3つの条件を加えたところ13名が抽出された:①非言語性知能の指標としてWISC-Ⅲの知覚統合群指数またはWISC-Ⅳの知覚推理指標が90以上、②LCSA指数が80以下、③これらの非言語-言語指数値間に15以上の乖離がある。LCSAのプロフィールは6つのクラスターのうち上記のC、D、E、Fに分散しており、成績が低下している領域に個人差が大きいことが示された。これらの結果から、言語に特に発達課題のある児童のプロフィールは多様であり、個人の実態に合せた指導目標と方法の設定が重要であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学校の通級指導教室(学級)の協力を得て、通級による支援を受ける児童に関する情報が蓄積されつつある。また、得られたデータの整理・分析に加えて、海外での実践に関する情報の収集も進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、実践事例についての情報収集をさらに進めるとともに、学級での言語・コミュニケーションや学習状況についての調査も実施し、より詳細な支援ニーズの検討を行う。このような児童の総合的な実態に基づく支援方法について提言を行っていく。
|