2015 Fiscal Year Research-status Report
行動問題を示す自閉症児の保護者への療育の主体性を促す支援プログラムの開発
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15K04556
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
岡村 章司 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (00610346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井澤 信三 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (50324950)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 行動問題 / 自閉症 / 保護者支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
行動問題を示す、自閉症児を持つ保護者に対する、「保護者自身への支援」を統合した、療育への主体性を促す支援プログラムを開発することを目的とし、平成27年度は行動問題を示す自閉症児の保護者が置かれている状況および実態について主に検討した。具体的には、(1)保護者へのニーズ、ストレス対処力、自閉症児の行動問題の実態に関する質問紙調査、(2)行動問題を示す自閉症児の保護者と連携した経験を持つ通常の学級担任を対象に、支援事例に関する面接調査を実施した。質問紙調査では、行動問題高群の知的障害を伴わない自閉症児の保護者は家族に関するニーズが有意に高いなどの結果が示されている。面接調査では、学校現場における、行動問題を示す自閉症児の支援の実際、および保護者との関係づくりや協働する際の配慮や工夫の具体を明らかにすることができた。 加えて、大学の特別支援教育コーディネーターコースが提携している自治体の小学校において、養育ストレスの高い自閉症児の保護者を対象に臨床研究を実施した。育児ストレスや不安の実態を介入前にアセスメントし、最初は保護者の子どもへの適切なかかわりへの着目を促すことを目的に、子どもや自らの行動へのモニタリング支援を行った。その結果、育児ストレスや不安が減少し、保護者は子どもへの不適切なかかわりへの振り返りを行うことも可能となった。さらに、対象児は複数の場面で行動問題を示さずに活動に取り組むことが増加した。 また、大学で教育相談を行っている保護者を対象とした臨床研究も継続的に実施した。2つの事例に関する研究成果を国際学会および国内の学会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、行動問題を示す自閉症児の保護者支援を「療育支援」と「保護者自身への支援」の2つの観点から整理し、統合化した包括的な支援プログラムを開発することを目的とし、学校現場でのプログラムの適用を考えている。そこで、1年目において、行動問題を示す自閉症児の保護者の抱える困難性やニーズ、および通常の学級担任が行動問題を示す自閉症児の保護者との連携・協働の具体を明らかにする必要がある。どちらの内容についても、計画通りに質問紙調査、面接調査を通して実施し、さらに保護者への臨床研究から支援内容の具体を検討することができた。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、1年目に実施した、行動問題を示す自閉症児の保護者へのニーズ調査、通常の学級担任への面接調査の結果について、さらにデータの分析を重ねていく。1年目には、ご協力いただける保護者に対して、ニーズ調査の質問紙での回答をもとに、望まれる支援の具体的内容等を面接調査する予定であったが、今後のデータ分析の結果に応じて必要であれば適宜実施する。 その後、調査の結果、これまでの事例研究の成果、国内外の保護者支援プログラムに関する先行研究の知見も踏まえ、解決すべき課題を集約し、必要な支援内容とその配列化を進める。自閉症児の行動問題の状況、及び保護者のタイプやニーズの差異に応じた、療育支援と保護者自身への支援の組み合わせのカテゴリーを仮説的に構成し、『支援プログラム試案』を作成する。また、大学で教育相談を行っている保護者を対象とした臨床研究は継続的に実施し、支援プログラム作成のための基礎資料を得ていく。 さらに、平成29年度からの学校現場との協働研究の実施に向けて、その環境整備を行う。具体的には、支援プログラムを活用する教員、研究対象とする対象児や保護者を決定し、成果を検証するための方法について検討する。
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Causes of Carryover |
調査研究のデータ整理などの謝金であるが、2,3月にデータ入力・整理を主に行ったため、4月以降の支払いとなり、平成28年度に使用する額として扱う。購入予定であったデータ記録用のハードディスクを購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定であったデータ記録用のハードディスクについては所持しているもので賄うことが可能であったため、今年度生じた費用により、学校現場等の会議で必要となるプロジェクターを購入する。
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