2019 Fiscal Year Annual Research Report
Design and Development of inclusive education system for students with medical care in regular school
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15K04559
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉利 宗久 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (60346111)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インクルーシブ教育 / 医療的ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
国際社会においてインクルーシブ教育の理念が浸透し、わが国でも多機関連携に基づく「医療的ケア」の提供が求められている。本研究は、通常の学校における「医療的ケア」の提供を法的に保障しながら、その性質や提供者の役割を判例の蓄積を通じて確立しつつある米国の経験に着目し、「医療的ケア」をめぐる持続可能な学校システムの条件を明らかにすることを目指した。特に、米国における判例の分析を通して、法解釈の枠組みや、それを実践化する際の論点を究明した。特殊教育関連サービスとしての「医療的ケア」提供の妥当性は、ケアの複雑性や経費負担の側面から判断されるのではなく、教育機会を保障するか否かの観点に基づいて判断される方向性を確認した。また、医療的ケア児に対する教育的支援の実際について、公立学校における取り組みを学校区,学校レベルで分析した。学校レベルにおける個別教育計画の策定に基づき,学校区レベルにおいて理学療法士や作業療法士などの多様な医療専門職による連携体制が構築されるシステムの特徴とプロセスについて報告した。一方、わが国における取組の到達点を捉えるため、教員に対する調査研究を実施した。まず、病気の子どものための「合理的配慮」に対する教員の意識の傾向を把握し,インクルーシブ教育の展開に向けた課題を明らかにすることを試みた。その結果、「合理的配慮」の提供に関しては、全体的に小学校よりも中学校における平均値が比較的に低い状況がみられた。年齢及び勤務年数についても、「本人の病状理解に基づく生活指導」及び「急な病状の変化への対応」に対して、経験が少ない教員の平均値が低いことが明らかになった。その他、通常の学校の教員における慢性疾患への意識・知識を調査した。最終的に、通常の学級における医療的ケア児の教育可能性と今日的限界を整理した。
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