2016 Fiscal Year Research-status Report
コンピュータモニタに提示される表示形態と視覚特性が弱視者の読書効率に与える影響
Project/Area Number |
15K04560
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
氏間 和仁 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (80432821)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | デジタル・リーディング / 弱視 / 読書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,パーソナルコンピュータやタブレット端末,高機能拡大読書器が普及し,弱視児童・生徒の 教育の場での利用が進んでいる。しかし,このようなモニター画面に映し出され文章の読書(以下,デジタルリーディング)に関する組織的・系統的な読書の研究は未着手である。デジタル・リーディングで用いられる文章の表示形態には固定表示,行移表示,一行表示,切片表示があり,視覚特性には視力や視野などが挙げられる。これらの要因が読書能力に及ぼす影響を,実験心理学的手法を用いて示すことで,今後,ますます普及するデジタル・リーディングにおける表示形態を,視覚特性 を加味して予測できる手法を開発することをもって,弱視者をはじめとする見え方に困難のある人々がデジタル・リーディングの表示形態を適切に設定できる環境の実現を図ることを目的とする。 晴眼者を対象にした文字サイズと表示形式が読速度に及ぼす影響に関する実験を行い,固定表示が,文字拡大に対して,読速度の低下を最も強く受け,行移表示と切片表示(5文字)が最も影響を受けにくいこと,文字が小さい条件では固定表示・行移表示・一行表示は同等の読速度であり,切片表示は有意に遅い読速度であること,文字の拡大に対して,効率的に読書できるのは行移表示であることを明らかにした。 当初の計画では平成29年1月から実施予定であった弱視者を参加者にとした実験を行った。弱視の実験参加者7名に対しても実験を実施した結果,晴眼者と定性的に同じ影響を受けることは少ないことがわかった。例えば,1行表示における文字拡大の影響は晴眼者よりも強く受けることや,読速度が遅い場合,表示形式が読速度に与える効果は少なくなることなどを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,当事者の実験参加者による実験は3年目で実施予定であった。しかし,現在,当事者の実験参加者による実験を終えている。そのため,3年目は,当事者による実験をさらに拡大し,デジタル・リーディングにおける当事者のニーズに応じた条件整備に関する実験を実施し,当事者のデジタル・リーディングの読書環境の設定に貢献する研究を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年は,当事者15名の参加を募り,デジタル・リーディングの環境設定に貢献するための実験を実施する。具体的には,デジタル・リーディングを実施して,これ以上文字を小さくすると読速度が低下する文字サイズと,これ以上文字を大きくすると読速度が低下する文字サイズを求め,テスト・リテスト法を用いて,その信頼性を確認する。このことにより,弱視者が適しているデジタル・リーディングの文字サイズと表示形式を推定することが可能になるという仮説を立てている。
|
Research Products
(12 results)