2016 Fiscal Year Research-status Report
学習障害児への早期対応のためのカリキュラムに基づく尺度の標準化と指導効果の検討
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15K04564
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
干川 隆 熊本大学, 教育学部, 教授 (90221564)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育評価 / 学習障害 / 進捗状況 / モニタリング / 計算 / 視写 / カリキュラムに基づく尺度 / 介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学習障害の児童に早期に対応するために、学習の進捗状況をモニターするための手立てとしてカリキュラムに基づく尺度(Curriculum Based Measurement; 以下CBM)を標準化し、それによって指導の効果を検討することであった。平成28年度は、1.通常の学級の児童を対象にCBMを実施し、その尺度の妥当性と信頼性を検討すること、2.標準化したCBMを用いて学習障害等の児童を対象に進捗状況をモニターし、個別指導の効果を検討することであった。 1について、昨年に引き続き小学校の協力が得られたので、計22回にわたり2年生から6年生までの264人に対して、3分間の視写と計算のCBMにを実施することができた。その結果、問題間の相関は有意に高く、教師による児童の算数と国語の5段階評価とCBMの児童の得点との間に有意な相関があることが示されたことから、視写と計算のCBMが信頼性と妥当性をもつと結論づけた。 2の目的に対して、前半を終えたところで計算の得点が1SD以上ほぼ毎回低い児童を抽出し、そのうち4年生5人、3年生1人に対して2週間に1度、計8回、放課後に個別または小グループでの算数の指導を実施した。その結果、4名の児童で計算のCBMが-1SD以内になることが示されたが、2名はあまり変化がなかった。しかし、いずれも児童も個別指導を楽しみにしており、分かる体験の重要性が示唆された。 2年にわたった結果を振り返ると、他の学年が毎回2~3ポイントの進捗を示したのに対して、高学年の視写(特に6年生)で、毎回の進捗が1.1ポイントになり、天井効果が示されたことから、引き続き視写を6年生に実施するかどうかは検討が必要であった。 さらに、CBMによって早期に抽出し、その介入の効果を検討するためには、8回の介入では成果が限られているため、さらに長期にわたる介入が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年に引き続いて、小学校の協力により264人の児童の視写と計算のCBMのデータを22回にわたって収集することができた。その結果、CBMの結果と教師の評価との間に有意な相関があることが示され、3分間の計算と視写のCBMの尺度が信頼性と妥当性をもつことが示された。また、定型発達の児童の進捗状況を把握したことから、成果尺度としての視写と計算のCBMの標準化することができた。 さらに6人の児童(4年生5人、3年生1人)に対して、個別または小グループで算数の指導を行ったところ、4人の児童で成績の上昇が見られたことから、早期に支援を必要とする児童生徒に介入することができれば、対象の児童がキャッチアップすることのできる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度もこれまでと同様に、小学校の協力によって2年生から6年生の児童(約270人)に対して23回の視写と計算のCBMを実施することで、進捗状況を把握するための尺度としてのCBMの信頼性と妥当性の検討を行う予定である。これまでの研究の積み重ねから、3年間の児童の継続的な成長過程を分析することが可能となるであろう。 さらに、前年度、1標準偏差よりも低い児童に対して個別または小グループでの算数指導を実施したが、期間が短かったために全員に明確な効果を示すことができなかった。そこで、今年度は、早期に学習につまずきのある児童を特定して、放課後に対象児に個別または小グループでの算数指導を実施することで、早期の介入が児童の成績のキャッチアップにどの程度影響するかどうかを検討するものである。 また、昨年度、先行文献で指摘されたように高学年(特に6年生)の視写において、天井効果が示されたことから、今年度は視写に代わる評価方法(たとえばMaze課題)を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
3月まで研究事務支援者により資料の収集を行い、4月にならないと最終的な額が確定していなかったため、最終的に赤字にならないように多めに予算を見積もった。このため6.704円の残金を残すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は、平成29年度に繰り越して人件費・謝金として資料の収集のために使う予定である。
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Research Products
(5 results)