2017 Fiscal Year Research-status Report
学習障害児への早期対応のためのカリキュラムに基づく尺度の標準化と指導効果の検討
Project/Area Number |
15K04564
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
干川 隆 熊本大学, 教育学部, 教授 (90221564)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 教育評価 / 学習障害 / 進捗状況 / モニタリング / 計算 / 視写 / 通常の学級 / カリキュラムに基づく尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,学習障害の児童に早期に対応するために,学習の進捗状況をモニターするための手立てとしてカリキュラムに基づく尺度(Curriculum-Based Measuerment:以下CBM)を標準化し,それによって指導の効果を検討することであった。平成29年度は,1)通常の学級の児童を対象に視写と計算のCBMを実施し,その尺度の信頼性と妥当性を検討すること,2)学習障害の児童を対象に視写と計算のCBMを実施し,指導による効果を検討することであった。 1)について,昨年度に引き続き小学校の協力を得て,計23回にわたって2年生から6年生までの279人の児童を対象に,視写と計算のCBMを実施し,データを得ることができた。信頼性については,問題間の相関が有意に高いことから,また妥当性については教師による児童の評価とCBMの結果との相関が有意に高いことから,視写と計算のCBMは昨年に引き続き信頼性と妥当性を持つと判断できる。一方で,視写は低学年では進捗が顕著であるが,高学年になると伸びが少なく天井効果を示していることが推測された。そこで,今年度は試験的に,文章の中に穴埋め問題を含み三択するMaze課題を取り入れてその信頼性と妥当性について検討した。その結果,物語文と説明文によって違いがあることからさらに問題の検討が必要である。 2)について,学習障害のある児童に対して定期的に指導を実施し,併せて視写と計算のCBMを実施し,CBMが学習の進捗状況をモニターできるかどうかを検討した。20名の学習障害児に対して指導とCBMの評価を実施したところ,いずれの児童も成績の上昇が見られたことから,指導の有効性の評価についてもCBMが有効であることが示された。しかし,すべての児童が定型発達の児童に追いつくことは難しく,学習障害の児童への指導の難しさが示された結果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き,小学校の協力を得て2年生から6年生までの279人の児童に対して計23回の視写と計算のCBMを実施することができた。問題間の相関が高いことからCBMが信頼性をもつこと,教師の児童に対する評価とCBMの結果とが相関が高いことからCBMが妥当性をもつと判断できる。また,20人の学習障害の児童に対して,個別指導と合わせて視写と計算のCBMを実施した。その結果,指導にあわせて成績が伸びていったことから,CBMが学習障害の児童の学習の進捗状況をモニターできる尺度であることが実証された。その一方で,視写のCBMの高学年の児童において天井効果が見られていること,学習障害の児童が定型の児童の成績まで追いついていないことが示された点については,今後の検討が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでの協力校とは別の小学校の2年生から6年生を対象に,これまでと同様に計算のCBMを実施する。さらに視写のCBMで高学年の児童で天井効果が見られたことから,4年生から6年生の児童を対象にMaze課題を用いて学習の進捗状況の把握を行う。 また,これまで実施してきた,学習障害の児童に対する個別指導とその効果の把握のために,CBMを実施する。さらに,定型の児童の計算CBMを実施する中で,いつも下方にいる児童に対して小グループまたは個別の指導を実施し,その効果について検討することも計画している。それによって,本研究ではCBMの開発だけでなく,スクリーニングの機能とそれに基づく支援の効果を実証することができるであろう。
|
Causes of Carryover |
(理由) 3月まで研究事務支援者による資料の収集を行い,4月にあんらないと最終的な謝金の額が確定していなかったため,赤字になることを恐れて多めに予算を見積もった。このため11,929円の残額を残すこととなった。 (使用計画) 残額は,平成30年度に繰り越し人件費・謝金としてデータの入力や分析のために使用する予定である。
|