2015 Fiscal Year Research-status Report
プロトタイピング手法を用いた重度・重複障害児のICT活用教材の開発研究
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15K04565
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大杉 成喜 熊本大学, 教育学部, 准教授 (10332173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 誠司 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (70568782)
清田 公保 熊本高等専門学校, その他部局等, 教授 (80186353)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / アシスティブ・テクノロジー / 重度・重複障害教育 / 教育工学 / 視線入力 / 外部機器制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は三年間で3つの課題に取り組む計画を立てている。初年度は「課題1:重度・重複障害児のスイッチ入力環境・教材の開発」と「課題2:重度・重複障害児の学習の分析」に取り組んだ。 課題1では「障害に合わせたスイッチ等学習環境の検討」と「障害・学習ニーズに合わせた教材の検討・開発」に取り組んだ。障害の重い子どもの入力装置として視線入力装置Tobii EyeXを選定、リレー出力による外部機器操作教材製作環境を実現した。この視線入力によるスイッチ出力教材開発環境の構築について、日本教育工学会誌ショートレター特集号に論文投稿を行った。 課題2では学校現場(協力校ほか)において「児童生徒の実態の分析」「障害に応じた試作教材」に取り組んだ。課題1で開発した教材製作環境を九州地区の肢体不自由特別支援学校現場に提案した。これらの研究成果は日本教育情報学会年会、日本育療学会学術集会、Japan e-ATフォーラムで中間発表を行うともに、全国肢体不自由特別支援学校校長会・PTA連合会の大会、マジカルトイボックスイベント(東京都)においても紹介を行った。 現在安価な視線入力装置は普及の途上にあるが、学校現場で手軽に教材製作ができる環境を対案した点を評価いただいた。九州地区の肢体不自由特別支援学校現場では課題1で作成した視線入力によるスイッチ出力教材開発環境による教材が制作・試用され、授業等での使用が進められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究参加者の一人である特別支援学校訪問教育学級生徒が病気のため逝去されため、当初の計画を見直し、学校での利用希望が高い視線入力装置の活用に重点を置くようにした。(株)ユニコーンが開発していたWindows用視線入力装置からマウスの機能に特化した視線マウスドライバの提供を受けた。これに使用記録機能を加えることで学習記録の分析が容易になった。外部出力についてはArduinoのFirmataプロトコルを使用することで実現した。その後、(株)ユニコーンによりPowerPointVBAでFirmataプロトコル通信を行うライブラリの提供を受けた。 こうして学校現場の教員が最も作成しやすいと答えた、Microsoft PowerPointを教材開発システムの中心に据え、視線マウス入力、スイッチ出力システムをセットとした教材製作環境が構築できた。 このように、これまで重い障害のため機器の操作が困難であった児童生徒が視線を使っておもちゃや道具を動かせる画期的なシステムを提案した。年度末にはこれを試作キット化し、九州地区の肢体不自由・病弱特別支援学校(本研究開始と同時に九州地区広域の研究会を立ち上げた)に配布、試用を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度中に学校現場での教材作成環境を整えることができた。平成28年4月14日と16日に熊本地震がおこり、一学期は熊本県内で研究実践を行うことが困難となったが、前年度末に他地域で実践を進める用意ができていたため、実践研究を継続することがことができた。教材作成および実践の中間成果を5月下旬の北九州での研究会において発表・協議を行うことを予定している。 今年度は構築した教材作成環境をさらに広く配布し、視線入力を使った障害の重い児童生徒のための教材実践を進めて行く。研究成果の詳細については日本教育情報学会年会(福山大会)で中間発表を行う計画である。 また、視線マウスの操作の詳細な記録をもとに、使用する児童生徒の学習の状況を分析していく。 本研究で作成したPowerPointによるスイッチ出力システムについては、障害のある子どもの教材製作以外にも使用が考えられるので、特別支援教育分野以外の学会等でも発表を行っていく。
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Causes of Carryover |
1月30日に熊本高専を会場にe-ATフォーラムを実施したが、製作講座用の材料購入を別予算で実施した。そのため当初計画の部品購入費を次年度に送ることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
視線入力装置およびスイッチ出力装置等。材料購入予算とする。
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Research Products
(4 results)