2016 Fiscal Year Research-status Report
金属を担持した光触媒系界面反応の高分解能in-situ計測
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15K04589
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上野 貢生 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (00431346)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 光触媒 / 金ナノ粒子 / プラズモン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、分光測定により金酸化チタン界面の電子移動について検討を行った。透明導電性電極基板上に原子層堆積装置を用いて酸化チタン(アナターゼ)を成膜し、その上に金のスパッタリング成膜(3 nm)、およびアニール法によって金/酸化チタン電極を作製した。3電極式の光電気化学測定により電流-電位曲線、光電流のアクションスペクトル、そして光電変換効率を測定した。また、同時に任意の波長の光を金/酸化チタン電極表面に照射した条件下で、プラズモンの分光特性を検討した。まず、光誘起電子移動反応に基づいて金ナノ粒子のフェルミ準位が変化し、局在表面プラズモンの共鳴波長がシフトすることを確かめるため、酸化チタンの吸収がある紫外光を照射してスペクトル変化を追跡した。その結果、金ナノ粒子内の自由電子と酸化チタンのホールの結合に基づいて、金ナノ微粒子のフェルミ準位が正側にシフトし、プラズモン共鳴スペクトルが長波長シフトすることが明らかになった。一方、可視光を照射して同様の測定を行ったところ、プラズモン共鳴スペクトルのシフトは観測されなかった。これは、可視光を照射した場合には、形成された正孔により水が酸化されるためであると考えられるが、紫外光を照射して形成した正孔では水の酸化は現在のところ観測されていない。同様の結果は、酸化チタン単結晶(ルチル)でも得られた。アニールの温度により酸化チタン/金ナノ粒子の界面を制御し、透過電子顕微鏡/EELSを用いて分析した結果と光電流、および分光測定の結果を比較して考察したところ、プラズモン励起/熱電子移動に基づいて形成した増強場近傍の酸化チタン表面準位にトラップされた正孔が水の酸化反応を誘起しているこれまでの考察をサポートする実験結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STEM/EELS測定と分光電気化学測定を組み合わせることにより、プラズモン誘起酸化反応のメカニズムを明らかにする上で極めて重要な研究成果が得られた。また、酸化チタンのルチルとアナターゼの比較も当初の予定通り行い、おおむね順調に研究が推進していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きSTEM/EELS計測と分光電気化学計測を組み合わせてプラズモン誘起酸化反応のメカニズムを明らかにすることを目的とする。アニール時の温度だけではなく、原子層堆積装置を用いてアルミナを原子レベルで成膜することにより、金と酸化チタンの界面の構造を制御し、熱電子移動や電荷分離の効率に変化を与えるとともに、そのときの分光特性や構造解析、そして時間分解分光計測なども組み合わせて解析や考察を行い、プラズモン誘起触媒反応のメカニズムの解明を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究において、光電気化学測定だけではなく、ラマン散乱測定や時間分解分光計測の必要性が生じることが明らかになった。そこで、平成28年度はラマン散乱分光や過渡吸収分光計測を行うための光学部品を購入するために平成29年度に配分した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光学部品(ミラーやフィルター)の購入に使用する予定である。光学系の構築は4月から行うが、現有の部品と組み合わせて使用するため、無駄とならないように吟味しつつ、平成29年度7月以降に使用を計画している。
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