2015 Fiscal Year Research-status Report
高次超分子シントンの探求によるπ電子系機能分子の精密集積プログラミング
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15K04591
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久木 一朗 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90419466)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素結合 / 超分子シントン / 有機結晶 / 共役パイ電子系 / カルボン酸 / 多孔質構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機分子を基盤としたエレクトロニクスは、化学の領域から技術の領域へと飛躍的な発展を遂げている。それに伴って、分子配列を精密に制御することの重要性が増している。しかし、計算化学や従来の「超分子シントン法」のみでは、要求される精度を達成することは容易ではない。そこで本研究では、より長周期の分子集合モチーフについて体系化して理解すると共に、新しい長周期モチーフを開発することによって、π電子系機能分子が精密に配列制御された分子集合体を構築することを目的とする。すなわち、「高次超分子シントン法」の探求と確立による、π電子系機能分子の精密集積プログラミングである。 本年度は、ケンブリッジ結晶構造データベース(CSD)を利用して、高次超分子シントンの構築に有用な水素結合およびその他の相互作用による超分子シントンの探索を行った。その結果、ありふれた弱い水素結合供与基であっても、それを集積化することによって非常に優れた高次の超分子シントンを形成できることが分かった。 また、環状のパイ共役分子である一連のデヒドロベンゾアヌレン(ヘキサデヒドロトリベンゾ[12]アヌレン、ドデカデヒドロトリベンゾ[18]アヌレン、およびそのフェニレン基による拡張誘導体など)および多環式芳香族炭化水素にカルボキシフェニル基を導入した分子群を合成し、それらを用いてカルボキシ基の水素結合を集積させた高次超分子シントンの形成と、それによる超分子集合の構築を行った。特に、最近我々が示した6つのカルボン酸が関与する協奏的な高次超分子シントンモチーフである「フェニレントライアングルモチーフ」を用いて、π共役系分子の2次元ネットワーク化を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まずCSDデータベースを利用して、高次超分子シントンの構築に有用な水素結合およびその他の相互作用による超分子シントンの探索を行った。その集積化によって高次の超分子シントンが構築可能な候補シントンが見つかりつつある。 また、超分子シントン部位を導入した、共役パイ電子系の化合物を合成し、高次超分子シントンによるそれらの配列制御についても着手し、とくに「フェニレントライアングル」と命名したシントンによる2D配列制御に成功した。 一方、ヘテロ原子を含む共役系については、ヘテロ原子上の孤立電子対の影響でネットワーク化が阻害され所望の構造構築には至っておらず、さらなる検討を要する。しかし、おおむね本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1、前年度に引き続き、共役π電子系の合成、および高次超分子シントンによる積層結晶の構築を行う。2、単結晶X線構造解析により結晶の構造を明らかにする。解析するために必要な高角側の反射スポットが十分に得られない場合は、放射光施設に課題申請し、輝度の極め高い放射光X線を用いた構造解析によって問題を解決する。3、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量分析(DCS)によって集積構造体の熱力学を解明する。固体蛍光を測定するとともに、蛍光量子効率、蛍光寿命を決定する。また、電荷移動度を測定する。単結晶を用いて、結晶内での分子配列に依存した異方性を解明する。4、空孔内に導入したゲスト分子の、構造体への物理物性の影響を調べる。5、高次シントンによって構築された低密度フレームワーク結晶の空孔を活性化(空間を保ったまま、結晶化の際に包接されたゲスト分子を取り除くこと)し、次いでN2ガスの吸着実験より空孔の形状・分布を明らかとする。6、化学刺激(ゲスト化学種の吸着)による構造と物性の動的変化を明らかにする。活性化前後の単結晶あるいは粉末結晶に対して、加圧あるいは、ずり応力・ねじれ応力を印加することによる構造と物性の動的変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
合成する予定であったヘテロ元素含有共役パイ電子系において、当初計画していた水素結合ネットワーク構造が形成されなかったため、追加の大量合成、構造解析、構造解析依頼、および論文の校正と投稿などに予定していた支出が翌年度に持ち越されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記に述べた問題点以外の事項については、申請書通りに計画を進める。一方、当初計画していたヘテロ元素含有共役パイ電子系をもちた所望の水素結合ネットワーク構築について、再度条件を検討する。具体的には、結晶化の際にこれまでは高沸点の水素結合性溶媒を使用してきたが、より脱離が容易な低沸点のカルボン酸およびアルコールを用いて構造の構築を行う。
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Research Products
(12 results)