2016 Fiscal Year Research-status Report
金属テーパー導波路におけるプラズモン超集束の数理解析と応用:テラヘルツ波への展開
Project/Area Number |
15K04598
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
栗原 一嘉 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (20270704)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | プラズモン / 超集束 / テラヘルツ波 / 導波路 / 電場増強 / 準変数分離 / 数理解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属V溝テーパー導波路を用いるとテラヘルツ波を波長以下に集光できることが実験的に知られている。しかし、そのメカニズムに関しては、計算シミュレーションや数理解析などで検討されているが、十分に理解されているとは言えない。その結果、金属V溝テーパー導波路の電場増強度や最適化などデバイス設計で明確な指針が得られず、デバイス特性の原理的説明が行えず、実験結果を理論に基づいて説明できない状態にある。このような状況を打開するために、本研究では、研究代表者が提案した準変数分離法により新規な数理解析理論を構築し、実験に応用する。 本年度は、実験で多用されている平行平板付き金属V溝テーパー導波路を検討し、金属V溝テーパー導波路から平行平板導波路への透過率、平行平板導波路内部での電場増強度を計算する理論形式を確立した。現在よく用いられているアルミニウムの誘電率(-32,000+670,000i)を用いた計算では、金属を完全導体として扱った計算結果との大きな差異は認められなかった。なお、実験では、完全導体に基づいた理論との有意な差異が観測されているので、現在よく用いられている誘電率が、実験的に有効でないことが示唆される。また、時間領域差分(FDTD)法による計算シミュレーションとの比較を行い、金属を完全導体として扱う計算は容易だが、テラヘルツ波領域での金属誘電率を入れた計算は膨大な計算時間が必要なために極めて困難であることが確認された。この点から、数理解析に基づいた理論を確立する重要性が再認識された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、実験で多用されている平行平板付き金属V溝テーパー導波路に関して数理解析理論で扱えるようになり、実験に有用な理論を構築する段階に入った。その結果、金属誘電率に関して文献値が有用でないことが明らかとなった。また、FDTD法による計算シミュレーションは、完全導体でなく金属誘電率を考慮した計算では、非常に長い計算時間がかかり、短期的にまとまった成果を出すのに有効でなく、現段階で深追いするのは不適切と判断される。一方、研究室内のTHz時間領域分光システムは立ち上げ途中であり、数理解析理論に基づいた実験を実施する段階には至らなかった。しかし、全体的にみれば、数理解析理論と実験との融合が図られており、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度、金属誘電率に関して文献値が有用でないことが明らかとなったので、最近報告されている金属誘電率(-500+500i程度)を用いて計算できるような数理解析理論を再構築し、平行平板付き金属V溝テーパー導波路に関して既に報告されている実験結果と比較検討する。また、研究室内のTHz時間領域分光システムを立ち上げ、数理解析理論に基づいた実験を実施する環境を整える。
|
Causes of Carryover |
当該年度末までに使用する予定であったが、物品費に僅かな差額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
僅かな差額なので、次年度物品費と組み合わせ使用する予定である。
|
Research Products
(7 results)