2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ構造制御によるカーボンナノチューブの熱電物性研究
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15K04601
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中井 祐介 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (90596842)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 熱電変換 / ゼーベック係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々が発見した半導体型単層カーボンナノチューブ(SWCNT)薄膜試料のBi2Te3系に匹敵する大きなゼーベック係数の起源を解明しさらなる向上につなげること、およびSWCNT薄膜の熱電物性の向上を目的としている。今年度は、以下の研究を行った。この他にも、SWCNT薄膜試料の熱拡散率測定実験も進めている。 (1)SWCNT薄膜試料の水雰囲気効果と熱電物性の直径依存性 SWCNT薄膜試料の平均直径とキャリア数を変えて、ゼーベック係数と電気抵抗率を測定した。その過程で薄膜試料が水雰囲気下でホールドープ効果をもつことを見出した。非平衡グリーン関数に基づいた理論計算との比較から、出力因子(Power factor)の最大値が半導体型SWCNTのエンリッチで3倍程度向上できること、直径には依存しないことがわかった。また、出力因子の向上には、電気伝導率の向上が重要であることがわかった。
(2)多重価電子バンドと高濃度ドーピングを利用した出力因子の向上 SWCNT薄膜試料に対して硝酸を用いた高濃度ホールドーピングを行ったのち、真空中でのアニールにより段階的に脱ドープを行い、ゼーベック係数と電気抵抗率測定を行った。その結果、出力因子にいくつかのピークが現れることが明らかになった。理論計算と比較を行うことによって、これらのピークはSWCNTの一次元性に由来した価電子バンドが重なる位置にキャリア数がちょうど調節されて生じると理解できることがわかった。このことは、ゲスト分子の導入などによってバンドの重なりを作りキャリア数を制御できれば、出力因子の向上につながることを示す結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱電変換性能向上へ向けた第一歩として、出力因子増加のための方針を提示することができ論文としてまとめることができた。今後は他の方針の探索とともに、出力因子を維持しつつ熱伝導率を抑制するための方法を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は全体として順調に進んでいる。現時点で研究計画の変更や遂行する上での課題はないが、問題が生じれば早急に対処する。
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Causes of Carryover |
以下の3点が次年度使用が生じた理由である: (1)キャリアドープする際にSWCNT試料を硝酸に浸して行うことを計画していたため、酸による劣化を考慮してSWCNT原料等の使用量を見積もっていた。しかし、水雰囲気にすることでSWCNTに可逆的にキャリアドープを行えることを研究遂行中に見出したため試料の劣化を考慮しなくてよくなり原料量を抑制できた、(2)SWCNT薄膜資料の不均一性を調べるために熱拡散率分布測定の経費を計上した、(3)装置トラブルによる修繕費用を計上した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
熱伝導率測定の依頼のために費用を計上する予定である。
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