2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノ-メゾスケールの界面水の動態から観る高分子材料の生体適合性
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15K04604
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
源明 誠 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (70334711)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ表面・界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高分子-水表界面のナノ・メゾスケール領域(数百ナノメートル領域)をターゲットに,表界面水の動態と材料の生体適合性との相関を明らかにすることを目的とする。昨年度までに構築した全反射近赤外分光測定装置を用いて,親水固体表界面(シラノール表界面)の水の温度依存近赤外スペクトルを得た。具体的には,278 Kから323 Kの範囲で5 K毎に,また,入射角45度から65度まで5度毎にスペクトルを得た。298 Kの角度依存スペクトルから,親水表界面には,3つの水素結合を形成した水分子の割合が最も高いことを昨年度までに明らかにしたが,298 K より高い温度および低い温度においても,同様の傾向が見られた。一方,入射角度が小さくなる,すなわち界面からの分光厚みが大きくなるにしたがい,その割合は減少した。逆に分光厚みが小さい場合には,3つの水素結合をした水分子の割合が相対的に増加した。これらの結果は,親水表界面における水は,固体表面の親水性基により固定化され,バルク水に比べて,熱運動に制限があることを示唆している。 上記の親水固体表界面の水の動態と生体適合性(タンパク質の接着性)を明らかにするために,タンパク質非接着性表面を構築した。具体的には,部分的にメチルホスホン酸化した分岐構造を有するポリエチレンイミンがシラノール表面に固着し,この固着膜が高い抗タンパク質接着性を示すことを明らかにした。この固着膜表界面上の水の構造評価は,今後の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,温度可変全反射近赤外分光測定を可能にし,温度摂動による固体表界面の水の動態を明確にすることが可能になった。また,高いタンパク質接着性を示すシラノール表面を,簡便な手法によりタンパク質非接着表面へと変換することも可能にした。本研究課題の目的である,生体適合性と固体表界面水の動態の相関を検討する上での基盤技術を確立したといえ,本研究の進捗状況はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した基盤技術・材料を用いて,タンパク質非接着表面上の水の動態を明らかにする。具体的には,メチルホスホン酸化した分岐構造を有するポリエチレンイミン固着固体表面,シラノール表面,シランカップリング剤でアルキル化した固体表面,さらにフッ酸処理を施したシリコン表面上への種々タンパク質の接着挙動を明確にし,また,全反射近赤外分光法により,それぞれの固体表界面からの距離の関数として水の構造を評価し,両者の間の相関があるのかを明確にする。また,本年度の予定の一部として計画していたアルコール類の固体表面上での構造についても併せて評価することで,表界面における水素結合性の特性の有無も明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた光学素子(シリコン基板)の購入を見送った。これは,本研究に適用可能な純度のシリコン基板が本年度中に調達できなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究遂行に必須のシリコン基板の購入に充てる。
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