2015 Fiscal Year Research-status Report
非長周期系の新奇ナノ粒子や薄膜の原子配列構造の解析
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15K04616
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
坂田 修身 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 中核機能部門, ステーション長 (40215629)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ルテニウムナノ粒子 / 原子配列構造 / 高エネルギーX線全散乱 / 2体分布関数 / 原子-原子-原子の角度分布 / 配位数 / 酸化物半導体薄膜 / デバイ温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規のfcc構造を有する粒径3.5 nmより大きいルテニウム(Ru)ナノ粒子が、 COの酸化性能が優れていることを構造情報と関係づけることが研究の目的であった。ナノ粒子の構造解析はこれまで結晶系の情報にとどまっていたが、さらに原子スケールの構造情報を得るため、SPring-8の高エネルギーX線回折プロファイルを測定し、散乱ベクトルの絶対値qの広い情報(0.162 =< q =< 25.5 Å^-1)を使った。1)リートベルト解析と2)2体分布関数(PDF)と逆モンテカルロモデリングの組み合わせ、2つの方法で別々に解析した。単色入射X線のエネルギーは61.7 keVであった。 調べたルテニウムナノ粒子は化学還元法で作製され、新規のfcc構造の平均粒径2.4、3.5、3.9、5.4 nmであり、hcp構造の平均粒径2.2、3.5、3.9、5 nmであった。 得られた構造情報は、fcc構造を有するRuナノ粒子の高いCOの酸化性能は、次の構造情報と関係づけることができた。1) 静的な原子位置の乱れを表す大きな温度因子で説明できること。2)近距離から中距離の構造の秩序はあるが、長距離の構造秩序はないこと。2)については、とくにPDFの最近接配位数のピーク幅と原子の結合角分布の約60度にあるメインピークの幅の両方が狭いことが、相関していた。 さらに、元素を高ドープした薄膜の原子配列の乱れの定量的な解析ができた。サファイア(0001)単結晶上のエピタキシャルLi0.5Ni0.5O薄膜からの1-11、 2-22回折の積分反射強度をもとに、デバイ・ワーラー因子とデバイ温度を281±39 Kと算出した。得られた2乗平均平方根振幅を(1-1 1)の面間隔で除すると6.3%になり、バルクNiOのそれの4.6%よりもかなり大きかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したように、ルテニウムナノ粒子についての測定を行い2体分布関数(PDF)と逆モンテカルロモデリングを用いた解析により、近-中距離の原子配列構造のモデルを得ることができた。その際、逆モンテカルロシミュレーションのソフトウエアを変更して用いた。以上は計画通りである。 さらに、予定以上に次の2点が進捗した。1)ルテニウムナノ粒子の全散乱データを、リートベルト解析でき、温度因子や格子歪の情報を得ることに成功した。2)高濃度に元素をドープした半導体薄膜は長周期構造を乱されていると考えられるが、その結晶性の評価する方法を新たに提案できた。 また、X線異常散乱(AXS)測定の準備は進めた。しかし、まだAXSの測定データの差分をフーリエ変換してPDF解析ができる処理プログラムは完成していない。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度で得られた、ルテニウムナノ粒子の配位数、原子間の結合角度分布などの近-中距離の原子配列構造やリートベルト解析で得られた温度因子や格子歪の情報とそのナノ粒子のCO酸化触媒性能との相関を調べる。さらに硬X線光電子分光によってルテニウムナノ粒子の電子構造を調べる。 また、元素を高ドープし構造が乱れることが予想される別の薄膜についても、H27年度に提案できた方法を適用し構造解析を試みる。 さらに、a-IGZOの構造を調べる。
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Causes of Carryover |
X線散乱測定装置をSPring-8のNIMSビームラインに用意する際、本科学研究費を使う予定であった。幸いなことに、その装置が共用利用可能であることが判明したため、他の予算を利用して準備することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の研究成果をまとめ、論文や学会で成果発表をする予定です。また、 高速計算のため複数のCPUコアを使って並列計算ができるワークステーションの購入を検討している。
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