2015 Fiscal Year Research-status Report
コヒーレントに励起された複数の光近接場プローブを用いた結晶内分極構造の観察
Project/Area Number |
15K04621
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
東海林 篤 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (40392724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 優 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (10371709)
石川 陽 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (10508807)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近接場プローブ / 半導体 / 波数 / 空間モード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属製光近接場プローブを二本用いて試料を励起する局所コヒーレント励起法を提案しており、本手法を結晶中の分極構造を可視化するための新たな物性解析手段として展開していくことを目的としている。二つのプローブの先端には外部から照射した光によって生じた光誘起分極が高強度に発生しており、この分極によって近接した試料が励起される。この時、その励起の仕方は光の振動数のみならず、プローブ間の距離や試料の方位によって様々に変化させることが可能であり、、結果として、特定の狙った振動数と狙った波数、狙った方位を満たす励起状態のみを励起することを可能にするという手法である。従って、本手法は様々な光デバイスのこれまでにない解析手段や評価手法として新たに展開することが可能であると期待される。 27年度は金属製光近接場プローブを試料へ近接させるためのシアフォース方式のプローブ装置の作製を行った。計測の対象となる試料は、電気伝導性の低い半導体もしくは絶縁体であり、トンネル電流を用いて試料へ近接フィードバックを行うSTM方式がつかえないからである。一方、今後測定の対象とする予定の試料・亜酸化銅半導体(Cu2O)について、マクロ光学系による空間モードを持った光による励起特性の測定も行った。本測定はプローブを用いた励起の予備実験であり、マクロ光学系による測定の結果からプローブの測定でどのような結果が期待されるのかの解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属製光近接場プローブの制御系の構築を行った。チューニングフォークと呼ばれるピエゾ素子の先端に金属プローブを備え付け、プローブの先端を試料に近接させる。ここでピエゾ素子を励振しておくと試料に近づいたときに周波数シフトが生じることからこれを参照信号と比較することでフィードバックコントロールを行うという手法である。現在のところ、基礎的なシステムであるプローブが試料に近接したときに生じる振幅の変化によりフィードバックを行う制御方法について構築を行っており、実際に近接制御できることが可能となっている。今後はさらに近接精度を上げることが可能な周波数変化による制御系の構築を行っていく計画である。 亜酸化銅半導体(Cu2O)に対する空間モードを持った光による励起特性の測定をマクロ光学系を用いて行った。亜酸化銅半導体は四重極の分極を持っており、これがブリルアンゾーンのΓ点に位置することから、四重極分極が結晶全体にマクロな領域まで広がっていることになる。(100), (110), (111)方向に切断した3種類の亜酸化銅結晶に対し、結晶の対称性の基底となる空間モードの光を照射したところ、空間モードを持たない光により強く励起されることを確認した。このことから結晶中の分極構造が空間モードを持った光の分極構造と一致したときにのみ選択的に励起出来ることが明らかとなった。この結果は今後プローブを用いた研究の基盤となる。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は光学系の構築を行い、プローブの先端に生じた光誘起の増強電界によって半導体中に励起子が励起できること、及び2本目のプローブで励起子を散乱させることによって二つのプローブ間に励起子を介したコヒーレントなエネルギーの授受が可能であることを検証する。本実験は偏光禁制の半導体・ZnTeを用いて行う予定である。偏光禁制の半導体に、禁制の偏光を照射しても励起子を励起することは出来ない。しかし近傍にあるプローブの先端には光誘起分極が生じており、この分極によって励起子が励起されることになる。さらに2本のプローブを用い、両者の位置関係が半導体の許容の方向となったときに励起子が励起され、観測されることを確認する。この観測結果を基に来年度の研究へつなげていく。 一方、波長可変レーザーの構築を行う必要もある。最終的に測定を狙っている亜酸化銅半導体Cu2Oの励起子準位は610nmであり、この付近で直接発振可能のレーザーはない。現在は所有している1kHzのOPOを用いた実験を進めているが、空間モードやパルス毎のふらつきが大きく、本研究で狙う微細な領域を均一に照射し、微小な発光の変化を観測する実験には向いていないことがマクロ光学系を用いた予備実験により明らかとなった。そこで、1220nmの半導体ゲインチップを用いて外部共振器レーザーの構築を行い、周期分極反転素子を用いて倍波をとることで610nmのレーザーを得る計画である。
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Causes of Carryover |
メーカーにおける半導体レーザーの波長を変換する非線形結晶の在庫が少ないとの情報を得、急遽こちらの結晶の購入を決め、代わりに波長可変レーザーのゲインチップの購入を一時的に停止した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後ゲインチップの購入をし、予定通りに波長可変レーザーの構築を行う予定である。
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