2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04636
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
山田 弘 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 教授 (10545974)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 走査イオンコンダクタンス顕微鏡 / 走査電気化学顕微鏡 / イオン選択性電極 / ライブセルイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,これまで,試料-電極間の距離制御にシアフォースを用いた走査型電気化学顕微鏡・走査イオンコンダクタンス顕微鏡システムの構築を行ってきてた.しかし,細胞など柔らかい試料にプローブを近接させた時のシアフォース変化の挙動は明らかになっていない.そこで,これを明らかとするため,水溶液中での油滴を細胞モデルとし,この油滴へガラスキャピラリを近接させた時のプローブの振動とイオン電流の変化を測定することによりシアフォースが試料に与える影響を詳細に検討した. プローブを試料表面と水平に振動させながら試料に近接させた時,ごく近傍で探針/試料表面間でシアフォースが働くため振動が減少する.油滴や細胞など極めて柔らかい試料表面に近接させた場合には,振動は緩やかに減少することを見い出した.これは,プローブ先端が試料表面を押し下げ,試料が変形するためであることが明らかにした.また,振動の大きさを変化させた時の挙動から,振動が大きいとき,より遠い距離から試料表面に相互作用を及ぼしていることを明らかにした.また,様々な粘度の有機溶媒を用いた油滴での挙動から,有機溶媒の粘度が大きいほど振動の減少量が大きくなることが明らかにした.これらの検討結果から細胞を走査する際に,シアフォースを用いた距離制御法では,プローブ先端と柔らかい試料表面との相互作用が無視できないことが示唆された.そこで,これに代わるものとして,イオン電導度プローブとイオン選択性プローブを組み合わせたデュアルプローブを試作し,イオン電導度により距離制御,イオン選択性プローブにより局所カリウムイオン流束を測定できるような走査プローブ顕微鏡システムの開発を試みた.イオン電導度を距離制御に使用できるよう走査プローブ顕微鏡の制御ソフトウェアの改造を行った.培養条件下,長時間に渡ってこのようなイメージングできるような培養チャンバーの試作を試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の第一の目的は,培養条件下で生細胞近傍のイオン電導度,酸素・イオン流束のイメージングが可能な走査プローブ顕微鏡システムを開発することである.微小イオン選択性電極,微小炭素電極や微小白金電極の先端と細胞表面の距離を一定に保ち,プローブを走査しつつこれらの電極で局所領域のイオンや酸素の流束をイメージングする必要がある.当初は,この距離制御にシアフォースを用いて細胞表面の局所カリウムイオン流束のイメージングを予定していた.しかし,当該年度における検討により,細胞や液液界面などの極めて柔らかい試料を走査する際,距離制御可能ではあるもののプローブ先端と試料表面の相互作用が条件によっては無視できないことが明らかとなってきた.そこで,イオン電導度を距離制御に用いるシステムの構築を優先させ,イオン電導度プローブとイオン選択性プローブを組み合わせたデュアルプローブを試作した.それぞれのプローブでカリウムイオン流束およびイオン電導度が同時に測定できることを確認した.当初予定していたシアフォース距離制御による生細胞イメージングを予定していたが,新たな距離制御法を導入することにより,従来よりも非侵襲な制御法を確立可能であることが確認された.現在細胞表面の走査の検討を行い始めたところである.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の検討により,距離制御にシアフォースよりイオン電導度を用いた方が望ましいことが明らかとなってきたため,イオン電導度プローブとイオン選択性プローブを組み合わせたデュアルプローブを試作した.本年度は,このデュアルプローブを細胞に近接させたときの電流応答を検討し,イオン電導度を用いて距離制御し,細胞表面を走査する最適条件を見出す.また,走査プローブ顕微鏡で走査する際,細胞の光学的イメージも取得する必要があるため,プローブの走査システムを倒立顕微鏡上に構築し,位相差顕微鏡観察をしつつ走査プローブ顕微鏡で細胞の3次元形状・細胞のカリウムイオン流束あるいは酸素流束のイメージを取得することのできるシステムを構築する.このデュアルプローブおよび倒立顕微鏡システムを用いて培養条件下で生細胞のイメージングを試みる.
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Causes of Carryover |
2015年度に柔らかい試料を走査する際のシアフォース距離制御法の検討を行った際,この手法よりはイオン電導度を用いた方がよいことが示唆された.当初はシアフォースでの生細胞走査を予定していたが,別の距離制御法を検討する必要が生じた.イオン電導度を用いた距離制御を行うためのデュアルプローブの開発を優先させたため,細胞培養は行わなかったので未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため,未使用額は,細胞培養の消耗品経費に充てることとしたい.
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Research Products
(1 results)