2015 Fiscal Year Research-status Report
共鳴格子による広範囲・高感度・高速検知可能な光学式水素センサー
Project/Area Number |
15K04638
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
水谷 彰夫 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50400700)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素センサー / 位相差測定 / グースヘンシェンシフト / 共鳴格子 |
Outline of Annual Research Achievements |
将来の水素エネルギー社会に向けた燃料電池の高効率化と安全性確保のために,水素濃度を広範囲で高感度・高速で検知できるパラジウム膜上共鳴格子型光学式センサーの開発を目的とする. 新規提案構造(水素検知部分であるパラジウム薄膜を光強度が集中する導波層中心部に設置した)とすることで,従来よりも共鳴角度あるいは共鳴波長のシフト量を増やす,つまり高感度化が可能であることが設計により確かめられた.しかし,検知分解能に関係する角度半値幅または波長半値幅が太くなってしまうというトレードオフの関係があることが判明した.その理由は,光強度が集中する部分に金属膜を設置した結果,光吸収が増え,導波層中の横方向伝搬距離が減ったためである.これを解決するには,プラズモンの長距離伝搬モードあるいは金属材料の検討のような何らかの工夫が必要であり,容易には解決できない.そこで,入射角度または波長を変える必要がなく,高感度計測が可能な位相差検出方法について研究をすすめた. 当初の計画では,ラジアル偏光(中心から放射状に電場が向いた光)入射によるセンサーからの反射光の強度分布をカメラで計測することにより,位相差をワンショットで面検出して算出することを考えていた.実は,共鳴が生じるときに,反射光が大きな位置ズレ,つまりグースヘンシェンシフトを起こすことが知られている.そこで,この位置ズレを測定することで,より簡易な光学系で同じオーダーで位相の代替測定ができる可能性を数値計算で示した.上記のラジアル偏光入射に対する反射光のカメラ計測では,光入射位置における構造のばらつきの影響が顕著に現れるが,グースヘンシェンシフト測定では,入射ビームスポットは固定するため,ビーム径にほぼ等しいおよそ1mm径の範囲で構造のばらつきを抑えればいいので,センサーの作製においてもメリットとなると期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大きな共鳴角度シフトまたは波長シフトによる高感度化と検知分解能に関係する角度または波長半値幅の細さとがトレードオフの関係にあるため,効果的な構造の設計ができていない.しかし,より高感度測定可能な位相差検出に適した設計では,入射角度と波長は固定するので大きなシフト量は必要ではなく,角度または波長半値幅が細いほうが位相の急激な変化が起こることから,細い半値幅の設計は可能である. そこで,位相差測定について検討する中で,位相差を回転検光子法などで直接測定する代わりに,グースヘンシェンシフトを測定することを提案し,直接測定よりも分解能は落ちるが,簡易な光学系で同じオーダーの分解能が実現できる可能性を数値計算で示した. しかし,試作に関しては,サブ波長格子構造を紫外線レーザー干渉露光により作製しており,強度分布のばらつきの影響で,計算値の約3倍と大きな半値幅のセンサーしかできていないため,遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,グースヘンシェンシフト測定の実証実験をする予定である.光学系としては,P偏光(参照光)とS偏光(共鳴光)の反射ビームの位置ズレの差をPSD (位置検出素子)を利用して測定する予定である.そのために,PSDを購入している.入射光のPとS偏光の切り替え方法については検討中である. さらに,位相差検出に適し,作製しやすいアスペクト比が低い構造について検討する. また,試作に関しては,センサー作製の再現性を上げるために,レーザー強度をモニターすることで,露光時間を決定し,露光量を一定にする予定である.
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Research Products
(1 results)