2015 Fiscal Year Research-status Report
液滴の相転移を利用した制御性と柔軟性をもつマイクロレーザの開発
Project/Area Number |
15K04642
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
斉藤 光徳 龍谷大学, 理工学部, 教授 (60205680)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レーザ / 色素 / 散乱 / 相転移 / ポリエチレングリコール / 誘導放出 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機色素や希土類元素などを光励起して発光させ、微小なレーザ発振器を作製することが本研究の目標である。このとき問題となるのが、小さなレーザ媒質中では励起光が十分に吸収されず、効率が悪くなることである。この問題を解決するため、散乱媒質中に発光体を分散させることを検討した。すなわち、励起光の光路が散乱による蛇行によって長くなるため、発光体に吸収されやすくなると期待して実験を行った。 散乱媒質として着目したのが、ポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは液体状態では透明であるが、固体になると白濁する。顕微鏡で観察すると、直鎖状分子の配向による同心円状の微細構造が見られ、これによって強い散乱が生じて白濁するものと推定された。液体から固体への相転移は、分子量1000では36~39℃, 2000では40~52℃, 6000では52~63℃付近で起こることが分かった。有機色素のロダミン6GをPEGに溶かして、波長532nmの励起光(パルス幅10ns)を照射すると、液相においては550~600nmの波長帯に広がる通常の自然放出による発光が見られただけであった。しかし、固相では570nm付近に鋭い発光ピークが現れ、誘導放出(レーザ発光)が起こることが分かった。この現象は、励起光が強く吸収されたことに加え、蛍光の光路も散乱によって長くなって誘導放出が起こりやすくなったことが原因と推定される。 色素を分散させる媒質として、コレステリック液晶やシリコーンゴムにも着目し、散乱現象や色素の拡散方法について実験を行った。その結果、コレステリック液晶は電圧による相変化で散乱を制御できることが明らかになり、色素を分散したシリコーンリングでは周回光(ウィスパリングギャラリーモード)による誘導放出を観測することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリエチレングリコールでは、予想していた通り誘導放出光を観測することができた。また、コレステリック液晶やシリコーンリングでも有用な散乱現象を観測することができ、新たな色素分散媒質として利用する可能性を見い出せた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画にもとづいて、新たな素材開発に重点を置いて研究を進める。色素を分散するマトリクスについては、初年度の研究で有用な素材を見つけることができたので、次年度は発光体について重点的に研究を行い、特に希土類元素について有用な素材や分散条件を明らかにする実験を行う。
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Causes of Carryover |
物品購入費や旅費が、当初の予測より若干下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算と合わせ、物品の購入にあてる。
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Research Products
(11 results)