2016 Fiscal Year Research-status Report
液滴の相転移を利用した制御性と柔軟性をもつマイクロレーザの開発
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15K04642
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
斉藤 光徳 龍谷大学, 理工学部, 教授 (60205680)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 希土類元素 / 発光 / ポリエチレングリコール / 色素 / 液体レーザ |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の微小レーザ発振器で用いられてきたロダミンなどの有機色素は、強い光にさらされると光化学反応によって発光機能が低下するという問題があった。この問題を解決するため、本年度の研究では無機蛍光体である希土類元素イオン、特にユウロピウム(Eu)について重点的に研究を行った。微小共振器となる液滴を形成するために、塩化ユウロピウムを純水に溶かして水溶液を作製し、波長396nmの紫色レーザを照射して励起したが弱い発光しか見られなかった。 弱い発光しか得られない原因のひとつは、希土類元素イオンの光吸収係数が小さく、励起光がほとんど吸収されないことにある。前年度の研究成果として、ポリエチレングリコール(PEG)を固体溶媒として用いると散乱によって吸収が増強されることが見出されたので、この現象を用いて発光の増強を試みた。その結果、Euの水溶液にPEGを添加していくと、液体状態でも発光が強くなるのが観測された。また、PEGの割合が90vol%を越えると発光スペクトルにも変化があり、波長613nmの発光ピークが592nmなど他の発光ピークを抑えて選択的に増強されることが明らかになった。この613nmの発光強度は、PEG100%の溶液中では水溶液中の80倍にも増強された。一般に希土類イオンの発光は周囲媒質の影響を受けやすいことが知られており、今回の試料でも水によってEuの発光エネルギーが奪われていたと考えられるが(クエンチ)、PEGがイオンを取り囲むことによってクエンチ現象が抑制されたものと推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耐久性の良い発光体として期待していた希土類イオンにおいても、ポリエチレングリコールが溶媒として有用であることを実証できた。当初は散乱による吸収の増大だけを見込んでいたが、PEGがイオンを取り囲むことによっても発光が大幅に増強されることを見出したことは、予想以上の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たり、これまでに有望な結果が得られた素材(発光体としてはロダミンとユウロピウム、分散マトリクスとしてはポリエチレングリコールと微小シリコーンリング)を中心に、目標である柔軟性を持つマイクロレーザの開発に向けて実験を進める。
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Causes of Carryover |
ほぼ予算通りに執行したが、予算額を越えないようにしたため、支払金額の端数が776円残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算と合わせ、物品の購入にあてる。
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Research Products
(8 results)