異方性結晶を対象とする可視～真空紫外域連続偏光発光・励起分光測定系の開発

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K04650
• Research Institution: University of Fukui
• Principal Investigator: 福井 一俊 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (80156752)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 真空紫外分光 / 発光分光 / 放射光 / III-V族窒化物半導体

Outline of Annual Research Achievements

異方性を持つ結晶は多く存在し、その発光機構を調べる場合、偏光発光・励起スペクトル測定は必須である。測定は励起光が可視域(VIS)でもそれほど容易ではないが、紫外(UV)や真空紫外(VUV)になると光源や偏光子の問題で非常に難しく、世界的にも多くは行われていない。そこで、本研究では世界的に数少ないVIS～VUV連続偏光発光・励起分光測定系をシンクロトロン放射光(SR)施設に構築し、まず一軸異方性を持つAlGaNの発光機構の解明に用いることを目的としている。
この目的達成のための第一段階は、VIS～VUV連続偏光発光・励起分光測定系構築である。この測定系は、励起光源側と発光分光側の2つから構成されるが、励起光源側はSR施設のビームライン(具体的にはUVSOR BL7B(BL3B))を利用するので、発光分光側の測定系の構築がメインの課題となっている。しかし、そのために予定していたVUV分光器の購入が困難となってしまったため、別の研究のために以前より構想のみ用意していたICF253真空フランジに作り付けで組み上げるVUV分光器を自作することに計画変更をした。初年度(昨年度)は対象とするビームラインの真空槽に収納可能な変形チェルニ・ターナ型VUV分光器が具体的に設計可能か否かの検討で終了している。そこで、本年度は3枚の金平面ミラーで構成し、かつ光軸に対し回転可能でなければならないVUV向けの偏光子の設計を行い、VUV分光器に組み込み可能な大きさで作製可能であることを設計上は確認した。これにより、設計において最も困難が予想されていた部分は終了した。また、VUV分光器の主要部品である金曲面ミラーの設計から購入までを行い、光学部品で最も調達に問題があると思われた部分も解決した。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

VUV分光器を自作する計画変更に伴って、分光器及び偏光子の設計に大きく時間を取られているため、区分としては遅れていると判断した。しかし、難関と考えていた偏光子の設計は終了し、かつ分光器を構成する既製品では入手できない曲面ミラー(2枚)を設計通りに購入し、設計を実現にする際で最も不安視していた問題点は本年度中に解決したため、既製品の購入・多くの部品類の機械製作、及び測定が残っており、また製作途中の現状では成果の発表等も出来ていないが、大きく遅れているとは考えていない。

Strategy for Future Research Activity

VUV分光器の製作にあたり、使用する超高真空部品・既製品の光学部品と整合性を持つ機械的な設計はほぼ完了しており、H29年度(最終年度)は、1) 部品類の購入 と 2) 工作のために部品図作製 3) 工作依頼 4) 組み立てと調整 5) 簡易制御ソフト作成 6) 実験現場への持ち込み　7) AlGaN偏光発光測定　の手順となる。
2)を最優先にH29夏を目標に 1)～4)を、秋を目標に4),5)を行い、H29年度後半に確保予定のマシンタイムで 6),7) を行う予定とする。7)で偏光発光をうまく捉えることが出来るかは未知の課題であるが、偏光を考慮しない AlGaN発光測定は使用予定のビームラインにて過去に多くの実績を持っているため、1)～5)の部分(特に2)と4))の進行が最大課題となると考えている。

Causes of Carryover

上述のようにVUV分光器を自作することに計画変更したため、真空部品・光学部品の決定と購入や部品の機械製作など大部分が次年度にずれ込んだため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

平面ミラー等の光学部品・超高真空部品・偏光子及びVUV分光器に組み込む受光素子の購入、学内および外部への部品の工作依頼及び旅費を計画している。