2015 Fiscal Year Research-status Report
磁性半導体スピントロニクスデバイスに用いる電気的磁気計測技術の開発
Project/Area Number |
15K04656
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
赤崎 達志 高知工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (10393779)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 磁性半導体 / 超伝導接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は,本研究で用いる磁性半導体 InMnAs薄膜の磁気特性評価を行った。InMnAs薄膜は,GaAs基板上のGaSbバッファ層に分子線エピタキシー法で成膜したものである(連携研究者(宗片教授)が成膜を担当)。InMnAs層厚 20 nmに固定し,Mn濃度を10, 12, 14 %の三水準,Mn濃度を12 %に固定し,InMnAs層厚を 10, 20 nmの二水準の試料を用意し,本助成金で購入した回転導入機構を用いて,異常ホール効果の温度依存性・印加磁場角度依存性の測定を行った。InMnAs層面内方向に磁場を印加した場合,磁化の反転は面内で回転するか一旦面直を向いてから反転するかの2つの場合が考えられ,磁化が面内に向きやすい場合は面内で回転すると推測できる。その結果,膜厚が20 nmの場合,Mn濃度が12 %では,磁化が面直方向を向きやすく,それよりもMn濃度が低くても(10 %),高くても(14 %),磁化は面内方向を向きやすくなることが分かった。また,Mn濃度が12 %の場合,膜厚が20 nmより薄い時は,磁化が面直を向きやすいことが分かった。 本研究では,磁性半導体を最小で数十nmサイズの細線構造に加工し、次に、超伝導細線を交差するように形成し、所望の接合面積を有する超伝導体/磁性半導体接合を作製する必要が有る。H27年度は,電子ビーム露光によるパターン形成、ドライエッチングによる低ダメージ加工により、磁性半導体の微細構造を形成するための,電子ビーム露光条件,ドライエッチング条件等の最適化を行った。その結果,連携研究者(入江氏)の協力を受けて,InMnAs薄膜をチャネル幅100 nmから2000 nm,チャネル長300 nmから6000 nmの細線に加工することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標である磁性半導体スピントロニクスデバイスの実現に向けて,ベースとなる磁性半導体材料の磁気特性を制御した成膜方法の確立は,必須の克服すべき課題である。H27年度は,本研究を進める上で,最初の課題である磁性半導体 InMnAs薄膜の磁気特性評価を行い,InMnAs薄膜のMn濃度や膜厚等の層構造及び薄膜の成長条件により,キュリー温度,保磁力,磁化容易軸等のバルクの磁気特性がどのように変化するかについて基礎的な知見を得ることが出来た。これにより,所望の磁気特性を有するInMnAs薄膜を作り分けることが出来るようになったと考えられる。また,磁性半導体スピントロニクスデバイスの実現に向けて,既存の半導体デバイス製造設備の利用と従来の半導体デバイスと融合させたハイブリッドシステムの形成は重要なキーテクノロジーとなる。H27年度は,InMnAs薄膜に対して,従来の半導体微細加工技術をそのまま利用することができるかどうかの検討を行った。電子ビーム露光によるパターン形成、ドライエッチングによる低ダメージ加工により、InMnAs薄膜をチャネル幅100 nm程度の微細構造に加工できることを確認し,作製条件の最適化を行うことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は,半導体微細加工技術を用いて作製したInMnAs微細構造の輸送特性及び磁気特性の評価を行う。InMnAs微細構造は,バルク薄膜とは異なる微細構造特有の輸送特性及び磁気特性を持つ可能性がある。また,微細化プロセスでの加工ダメージによる特性変化の有無についても評価する必要がある。そのため,超伝導体/磁性半導体接合の作製に進む前に,H27年度に作製したチャネル幅100 nmから2000 nm,チャネル長300 nmから6000 nmのInMnAs細線の異常ホール効果の温度依存性・印加磁場角度依存性の測定を行い, H27年度に確立したInMnAs薄膜の磁気特性評価手法を用いて,輸送特性及び磁気特性の評価を行う。
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