2015 Fiscal Year Research-status Report
窒素プラズマによるサファイア基板表面における高品質AlN転換層の単結晶成長技術
Project/Area Number |
15K04668
|
Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小澤 哲夫 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (90247578)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 窒化物半導体結晶 / 窒素プラズマ / 活性化エネルギー / AlN / 拡散過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、窒化物半導体結晶を育成するために、高温、高圧を必要とする成長法を用いており、高コストとなっている。特にAlNは大変高価であり、低コストなデバイスを作成する上で大きな問題である。また、高温、高圧プロセスを経て育成されるため、高品質な物は得られにくく構造欠陥を含んだ製品となる。本研究では、窒化物系デバイスの高効率化を目指した基板材料開発を行った。特にAlN基板作成には、Al-N結合は強固であり、2200 ℃程度の高温プロセスが必要となる。高温、高圧プロセスを避け、容易にAl-N結合を形成させるためN(窒素)プラズマを採用した。Nプラズマ中の窒素ラジカル(N*)により、Al原子との結合に関する活性化エネルギーの低下を期待し、低温でAl-N結合の形成ができるものと考えた。窒素プラズマをAl2O3基板に照射し、Al-O結合中の酸素原子(O)を切り離し、窒素原子に置換することにより、Al2O3基板表面上にAlN膜を形成する手法である。本年度の目標は、酸素-窒素の置換機構の解明をおこない窒素侵入機能の物理モデルを構築することである。具体的には、マイクロ波による窒素プラズマが、サファイア内部に侵入し、Al-O結合を切断し酸素と置換してAl-N結合形成する過程である。SiにおけるOの拡散によりSiO2が形成するディール・グローブモデルを本研究モデルに適用して、成膜時間と転換層厚さ、拡散係数(活性化エネルギー)の関係からa)窒素プラズマの侵入および拡散、b)Al-O結合の切断、c)Al-N接合の形成を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素プラズマ照射時圧力1000Pa、窒素プラズマ照射時間2~8時間の試料のEPMAによる窒素分布の測定結果から、窒素濃度分布において、表面に窒素が分布していることが確認された。XRDによる測定から、AlN(0002)回折ピーク強度の比をX線強度比から、プラズマ照射時間が2hから5hの間で、X線強度比は急激に増加し、AlN(0002)回折ピーク強度が増加することが確認できた。また、照射時間が5時間以上になると強度比の増加が緩やかになることが確認できた。照射時間が増加すると共に、活性化した窒素ラジカルが転換したAlNを通過して、AlN/ Al2O3 界面に到達し、酸素との置換反応を生じさせたものと示唆できる。また、照射時間7h、8hでの試料作成を複数回試みたが、X線強度比が増加する傾向は見られず、飽和した。この傾向は、シリコン(Si)表面の熱酸化過程と類似している。 AlN転換層形成の温度525℃と675℃における膜厚と照射時間の関係から、形成温度525℃と675℃共に、照射時間の平方根に対して、AlN転換層の膜厚が線形的に増加していることが分かった。Deal-Grove modelを用いて、近似曲線から拡散係数を求めた。拡散係数は、温度525℃が4.5×10^-12 [cm^2/s]であり、温度675℃は1.7×10^-11 [cm^2/s]となった。Deal-Grove modelで求めた拡散係数を用いてアレニウスプロットを利用して活性化エネルギーを求めた。AlNの活性化エネルギーは13.3[kcal/mol]となり、この結果はGaAsのAsの自己拡散と比べても小さい値となることが分かった。このことから、AlN転換層の成長に用いる活性化エネルギーが比較的小さなエネルギーであることが確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)プラズマ照射密度の最適化 窒素プラズマ照射時にカソード電極とアノード電極間に直流バイアス300V程度を印加すると、プラズマ分布が扁平した重畳放電プラズマとなる。この操作により基板表面内のプラズマ分布の均一性と密度が向上する。印加する直流バイアス電源は、申請した高圧電源を使用する。また、カソードとアノード電極の配置、基板を設置するPBN坩堝の形状をプラズマモデリングシミュレーションソフトVizGlow(Wave Front社)を使用し、解析する。①VizGlowによる印加電圧値、カソード、アノード形状、坩堝形状の組み合わせによるプラズマ流体の解析を通したサファイア基板表面のプラズマ密度との依存性の検討を通して装置を設計する。窒素プラズマ密度の境界条件は、ラングミューラープローブによるプラズマ密度測定システムを用いて測定した値を使用する。②解析の結果から、直流バイアス印加による成膜実験を行い、AlN転換層の成膜速度を50~100µm/hの高速化を目指す。③サファイア基板の面方位を極性面のC面から無極性面のm面および半極性面のR面に変えることにより、Al原子とO原子が同平面上にある場合の成膜速度の依存性を検討する。 (2)サファイア基板の面方位依存性 極性面では、Al原子列の後ろにO原子列があるため、N原子が置換するにはAl-Oのバックボンドを切断しなければならない。無極性面と半極性面では置換に要する活性化エネルギーが低減し、AlN転換速度の向上が期待できる。 (3)光学特性と結晶品質の依存性 作成したAlN転換層の結晶性の調査をEPMAによるCLマッピング技術により、イエローバンドによる欠陥分布の測定を通して、低減化を図る。この結果を数値解析、成膜条件にフィードバックして、欠陥密度を1000/㎝3まで下げる。
|
Causes of Carryover |
B-Aの差額12,891円は、サファイア基板洗浄用の有機溶媒を購入予定であったが、研究室の在庫で賄ったため、当該年度では使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、当該年度で生じた差額12,891円は、サファイア基板洗浄用の有機溶媒として使用する。
|