2016 Fiscal Year Research-status Report
窒素プラズマによるサファイア基板表面における高品質AlN転換層の単結晶成長技術
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15K04668
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小澤 哲夫 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (90247578)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 窒化物半導体 / 窒素プラズマ / 単結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化物半導体は一般に高温高圧下でのみ生成するため、欠陥が発生しやすく、高コストとなる。また、サファイア基板とその上に形成される窒化物半導体との間の格子不整合率が大きいため、基板とデバイス層との間に格子欠陥が発生する。そこで、本研究では窒素プラズマを用いることで、サファイア基板上へAlN単結晶を低温低圧下で成長させることを目的とした。 平成28年度の目標は、(1)窒素プラズマ照射時に生ずるサファイア基板のスパッタ現象の減少と窒素ラジカルの密度向上により、成膜速度と表面平坦性を促進する。(2)サファイア基板の面方位を極性面のC面から無極性面のm面および半極性面のR面に変えることにより、Al原子とO原子が同平面上にある場合の成膜速度の依存性を検討することであった。 研究成果は、(1)サファイア C面基板、照射時間4時間のAlN転換層断面のEPMA測定による深さ方向への窒素濃度比は、試料表面が最も高く、深さ方向に向かって指数関数的に減少する傾向が見られた。AlN転換層形成の初期段階は、Si酸化膜形成に用いられるDeal-Groveモデルのように矩形の濃度分布を示すが、その後、窒素の濃度分布はフィックの第二法則に従うことが予想された。このため、Deal-Groveモデルとフィックの第二法則によるモデルを組み合わせた2段階拡散モデルを構築し、測定結果と解析結果との間には定性的な傾向の一致が見られた。また、フィックの第二法則における拡散形態は、Deal-Groveモデルの拡散形態よりも窒素の移動が100倍速いことが推測できた。(2)C面においては上述の2段階拡散モデルが適用できたが、無極性のm面および半極性面のR面では多結晶化してしまい、単結晶成長しない傾向が得られた。この傾向に関する物理的なモデルは構築できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サファイア表面から窒素原子が侵入・拡散するモデルが構築できた。また、酸素と窒素が置換したAlN転換層は極性面であるC面の場合は必ず単結晶成長させることができ、当初の低温低圧下でのAlN単結晶成長技術と物理モデルの構築は達成された。しかし、派生的に無極性のm面および半極性面のR面では多結晶化してしまい、今後の物理モデルの構築が課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
光学特性と結晶品質の依存性として、作成したAlN転換層の結晶性の調査をEPMAによるCLマッピング技術により、イエローバンドによる欠陥分布の測定を通して、低減化を図る。この結果を数値解析、成膜条件にフィードバックして、欠陥密度を1000/㎝3まで下げる。また、無極性のm面および半極性面のR面では多結晶化の原因を探る。
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Causes of Carryover |
AlN転換層形成モデルを構築するために、新たに2段階拡散モデルを提案した。実験結果と数値解析結果は定性的に一致した。しかし、この数値解析の前提としてプラズマ密度の時間的な変動は、基本モデル構築後に行う予定としたため、プラズマ解析ソフトParticle-Plusの購入は平成29年度4月とした。また、AlN転換層上へのInAlN混晶成長の可能性も見られたため、Al、Inの材料費を次年度に支出する計画を立て変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度4月にプラズマ密度の時間的な変動を解析するために、解析ソフトParticle-Plus 985,608円、InAlN混晶成長のための材料アルミニウム、インジウム325,037円を支出する。
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