2016 Fiscal Year Research-status Report
走査型非線形誘電率ポテンショメトリの開発とその電子材料・デバイス評価への応用
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15K04673
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山末 耕平 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (70467455)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 走査型非線形誘電率顕微鏡 / 走査型非線形誘電率ポテンショメトリ / 自発分極 / 永久双極子 / 走査型プローブ顕微鏡 / グラフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,新規なナノスケール電位測定法である走査型非線形誘電率ポテンショメトリ(SNDP)の開発とその電子材料・デバイス評価への応用に関する研究を遂行している.SNDPは,既存手法と異なり,自発分極の誘起する電位に選択的に敏感であることが理論的に示されている.本年度は,前年度までに開発を進めた超高真空下で非接触動作するSNDP(NC-SNDP)を用いて研究を進め,主に以下の実績を得た.(i) 既存の電位測定法であるケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)とSNDPを実験的に比較した.その結果,理論的に予想された通り,SNDPはKPFMと異なって接触電位差に応答しないことが実証された (ii) NC-SNDPを応用して自発分極に起因する表面電荷密度を定量的に推定する手法を提案した.同手法をシリコン清浄表面に適用し,形状,電位,分極電荷密度の同時観察像において,原子コントラストが得られることを確認した.本結果は,NC-SNDPを用いて分極電荷密度を原子スケールで定量測定できる可能性を示す.また,同手法を窒化ガリウムの自発分極測定に応用することを試みた.(iii) SiC基板のC面上に成膜されたグラフェンの観察を行った.その結果,C面上グラフェンではSi面上グラフェンと異なり,様々な形状の下部構造がみられる一方,空間的にほぼ一様かつ中性の電位が観察されることがわかった.これは,C面上では最表面のグラフェン層と下部構造の間の相互作用が弱く,これらが電気的に分離されていることを意味する.グラフェン等の2次元材料は電子材料として優れた特性を持つものの,基板との相互作用で大きく特性が変化することが知られている.本結果は,SNDPを用いることで,2次元材料と基板との相互作用を評価できる可能性を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の項目で述べた通り,前年度までに開発を進めたNC-SNDPを用いて,本年度は主に(i) SNDPとKPFMとの実験的比較 (ii) 分極電荷密度の定量測定手法の提案と実験的検証 (iii) 2次元電子材料評価への応用を進めることができた.(i)については接触電位差に対するSNDPとKPFMの応答の違いについて実験的に明らかにできた.しかしながら,KPFMによる電位像取得において原子コントラストが得られておらず,当初計画されていた原子スケールでのSNDPとKPFMの電位像の比較は行えていない.また(ii)については,装置開発の目処がついたため,平成29年度に計画されていた分極電荷密度測定の一部を前倒しで行ったものであり,当初の計画以上に進捗がみられる.(iii)については,前年度までにSNDPが2次元材料の評価に有効であることが示唆されたため,適用対象をSiC基板のC面上グラフェンに拡張して研究を行ったものであり,この点でも当初想定された内容を上回る成果が得られた.以上の自己点検に基いて,進捗状況を総合的に検討した結果,実施計画を概ね満足する状況であると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
KPFMとの実験的比較においては,KPFMの分解能を原子スケールまで向上させる.課題であるKPFMの分解能向上のため,センサの感度向上を達成する.また,分極電荷密度測定については,引き続き当初の計画を進める.シリコン清浄表面での原子分解能による分極電荷密度の定量測定ならびに化合物半導体の自発分極測定を試み,提案手法の妥当性について検証を進める.さらに,2次元材料評価への応用については,グラフェン以外の様々な物質への適用を進め,提案手法の応用対象を拡大する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額はSNDPの装置開発および実験を効率的に進めたことにより生じたものである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
SNDPによる2次元電子材料の評価について適用対象の拡大を試みるため,試料となる様々な2次元結晶の購入を追加で計画している.また,分極電荷密度測定の対象となる化合物半導体試料作製の費用に充当する予定である.
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