2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ領域のみを加熱する光熱変換素子の開発と医療応用
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15K04679
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
柳谷 伸一郎 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (40314851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 信夫 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (60170461)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / プラズモニクス / フォトニクス / 光熱治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴現象を利用したファイバー型ナノ光加熱治療素子の実現へ向け、1.デバイス設計、2.ナノ光熱力学の基礎研究、3.生体物質の力学特性評価の分野について研究を行った。当該年度で報告した研究成果として、主に二つのことについて成果報告を行った。 (1)金ナノ粒子、マイクロガラスビーズによるグラフェン/SiCの表面増強ラマン効果:本研究では、ガラスビーズを金ナノ粒子に付着させたプローブを使い、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴を発現、観察する必要がある。まず初年度において、ガラスビーズ及び金ナノ粒子の表面増強ラマン散乱効果について研究報告を行った。直径40ー100nmの金ナノ粒子をシリコンカーバイドの熱分解法で作成したグラフェン上に堆積し、ラマンスペクトルとラマン強度マッピングについて研究した。その結果、グラフェンのD-band、G-band、一部のSiCのラマンピークが30倍程度増強したことを確認した。また、マイクロガラスビーズのレンズ効果で焦点位置が変わることにより、周りに比べて3倍程度強いラマン像を得ることができた。この研究は、金ナノ粒子分散マイクロレンズのプラズモン特性に対して重要な示唆が得られたと考える。 (2)金ナノ粒子の熱プラズモニクスによるナノバブルの生成とその寿命に関する研究:ナノ光熱力学の基礎研究として、金ナノ粒子の光プラズモニクスによるナノバブルについての研究報告を行った。金ナノ粒子はガラス基板上に1層堆積し、488nmのCWレーザーにより金ナノ粒子の光加熱を行った。CWレーザー強度によるバブルのサイズ変化、レーザー強度と照射時間とバブルの収縮速度の相関などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴現象を利用したファイバー型ナノ光加熱治療素子の実現へ向け、1.デバイス設計、2.ナノ光熱力学の基礎研究、3.生体物質の力学特性評価の分野について研究を行った。 1.設計:平成27年度では金ナノ粒子のレーザー照射時の散乱光強度分布、熱伝導に関する計算機実験を行った。物理シミュレーションにはCOMSOL Multiphysicsを用い、基板上に金ナノ粒子が付着した際の散乱光強度分布や、熱伝導についての基礎的な計算機実験を行った。平成27年度で行う予定であった、金ナノ粒子やマイクロガラスビーズの粒径やレーザー波長/強度の最適化などについては次年度以降に課題を残した。 2.光熱力学:金ナノ粒子加熱によるアルコールマイクロバブルの生成速度、寿命についての検討を行った。エタノールやメタノール濃度に依存して、バブルの生成速度や寿命が変化した。この現象は、アルコールの蒸発自由エネルギーや表面自由エネルギーに依存すると考えられ、その相関ついて引き続き検討を行う。 3.力学特性評価:原子間力顕微鏡を使った表皮角層細胞のフォースカーブ測定についての研究を行った。平成27年度では、グリセリン水溶液中での表皮角層組織、表皮角層細胞の硬さ変化についての実験を行った。また、表皮角層細胞の実験において、細胞が非常に薄いため、ガラス基板の影響を受けてヤング率にバラツキがあったため、基板にゲルシートを採用し、その効果についての検討した。この成果については平成28年度に発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴現象を利用したファイバー型ナノ光加熱治療素子の実現へ向け、1.デバイス設計、2.ナノ光熱力学の基礎研究、3.生体物質の力学特性評価の分野について研究を行う。初年度の研究を行った中で、金ナノ粒子の表面増強ラマンを利用した診断についても検討を行う。 1.設計:平成28年度では引き続き、金ナノ粒子のレーザー照射時の散乱光強度分布、熱伝導に関する計算機実験を行う。金ナノ粒子やマイクロガラスビーズの粒径やレーザー波長/強度の最適化などについては、複雑なモデルが必要となるため、単純化されたモデルの組み合わせを考える。また、金ナノ粒子分散ガラスビーズについては、これまでは金ナノ粒子分散液からの吸着を行っていたが、本年度では、ガラスビーズ上の不均一核生成を利用したナノ粒子作成について検討を行う。 2.光熱力学:引き続き、光プラズモニクスより発生する熱の分布を確認するために、バブルの生成についての検討を行う。特に、原子間力顕微鏡を使った研究を行う上で、金ナノ粒子のガラス基板との相互作用力が弱いためスキャンの途中で粒子が脱離してしまうことがあったため、金ナノ粒子を固定化させるために金ナノ粒子の上に透明な結晶膜を気相成長法で成膜し、原子間力顕微鏡による研究を主に行う。 3.力学特性評価:引き続き、原子間力顕微鏡を使った表皮角層細胞のフォースカーブ測定についての研究を行う。特に、金ナノ粒子で加熱された角層細胞の硬さ変化についての測定について重点を置いて実験を行う。
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Causes of Carryover |
3月に行われた応用物理学会の国内旅費およびいくつかの物品の処理が3月31日に間に合わなかったため、
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に、旅費及び物品の手続きは終了おり、その支払に使用される予定である。
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Research Products
(6 results)