2015 Fiscal Year Research-status Report
高温超伝導体によるテラヘルツ波発振の高周波数化、高強度化と高温化
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15K04688
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
南 英俊 筑波大学, 数理物質系, 講師 (00190702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 和男 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00272170)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジョセフソン効果 / テラヘルツ波 / 高温超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ジョセフソン接合が原子レベルで積層した構造をもつ高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δを使うテラヘルツ波発振デバイスの高周波数化、高強度化と動作温度の高温化を目的としている。 今年度は、論文発表を6件、学会発表を13件行った。論文の内2件は、従来のデバイス構造(メサ構造)から熱伝導の悪い超伝導体基盤部を取り除いたもの(メサ部のみ)を熱伝導の良いサファイア基板で挟むことにより、素子で発生するジュール熱の排熱性を向上させ、これまでで最高の周波数2.4 THzのテラヘルツ波発振を観測したというものと、その詳細に関するものである。論文の内1件は、接触熱抵抗の低減によって排熱性を向上させることにより、液体窒素冷却ではこれまでで最高の周波数0.43 THzでの発振に成功し、かつ液体窒素冷却で発振強度が最も強くなるよう最適化したという報告である。残りの3篇は、デバイス内の温度分布の測定と発振周波数の構造面からの同定というデバイスの動作理解に向けた研究、およびこの発振デバイスの応用に係るものである。 本年度は、上記成果を出すにあたって開発した技術を利用して、長年の懸案である高強度化を目指した発振デバイスのアレイ化に着手した。新規に購入した高精度小型切削機(NCフライス)を用いたサファイア基板への微細加工や蒸着用メタルマスクの作製と、既存設備によるアルゴンイオンミリング加工、真空蒸着、スパッタなどを併用して、発振デバイスの1×5および2×5のアレイを作製した。また、高精度小型切削機を用いて、アレイ化した発振デバイス間の電磁気的結合を促進する構造体を試作し、テラヘルツ波の測定実験を開始した。さらに、発振デバイスの新しい作製法としてウェットエッチング法の開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発振デバイスの1×5および2×5のアレイを作製する過程で、様々な課題が現れてきた。アレイを作製するために従来よりも大きな結晶を用い、かつ廃熱性を上げるため薄く劈開しなければならないが、大きな結晶を薄く均一に劈開する難しさ、大きな結晶を基板に一様に接着する難しさ、アレイ内の各素子の特性を揃える難しさ、超伝導体基盤部を取り除いた構造での電流リードと素子の間の接触抵抗などの問題に直面しており、その対策と解決に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度に引き続き、本研究課題の中で最も重要なテーマと位置づけている、発振デバイスのアレイ化による高強度化の研究に力を注ぐ。「11. 現在までの進捗状況の理由欄」で述べたアレイを作製する過程で現れてきた様々な課題の解決を試みながら、5~10のアレイの改良を進める。大きな結晶を薄く均一に劈開する過程が歩留まりを下げているので、結晶を2μm~4μmに薄く均一に劈開するための冶具を作製し、また狙った厚さになったか観察できるようにする。アレイ化した発振デバイス間の電磁気的結合を促進しテラヘルツ波を効率良く取り出すための構造体を試作・改良し、発振出力を現在よりも格段に上げられることをサブテラヘルツ帯域において実証すること、を具体的な目的として研究を遂行する。昨年度着手したウェットエッチング法による発振デバイスの作製を今年度も継続する。 29年度は、単色連続波を発振する小型素子の開発が最も遅れている1THz~2THz帯域での発振出力の高強度化へと発展させたい。また、液体窒素冷却で動作する周波数を現在の0.43 THzから高周波側へ拡張するとともに、1THz~2THz帯発振の動作温度の高温化を推し進めたい。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも高い精度をもつ小型切削機(NCフライス)を購入したが、門脇和男を研究代表者とする基盤研究(A)(課題番号15H01996)と共用で購入したため、当該物品に対する支出額は減少した。そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度から本年度への繰越金については、本年度初頭に旅費および物品(消耗品)費として使用する予定である。本年度分として申請した助成金については、大半を「11. 現在までの進捗状況の理由欄」で述べた問題に対する対策に充てる予定である。具体的には、結晶を2μm~4μmに薄く均一に劈開し厚さを観察するシステムを整備する予定である。また、大きな結晶の基板への接着、電流リードと素子の間の接触抵抗の低減、極低温~室温間の熱サイクルに弱い銀ペーストの排除を目的として、超音波を用いた方法を整備する予定である。消耗品費として、発振デバイスを作製するためのミリング用金属マスク、資材、化学薬品、高精度小型切削機用の工具など、また、発振デバイスと検出器の冷却に必要な液体ヘリウム、液体窒素を購入予定である。研究代表者および大学院生が学会で成果を発表するための旅費の一部を本研究費で賄う。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] A high- Tc intrinsic Josephson junction emitter tunable from 0.5 to 2.4 terahertz2015
Author(s)
T. Kashiwagi, K. Sakamoto, H. Kubo, Y. Shibano, T. Enomoto, T. Kitamura, K. Asanuma, T. Yasui, C. Watanabe, K. Nakade, Y. Saiwai, T. Katsuragawa, M. Tsujimoto, R. Yoshizaki, T. Yamamoto, H. Minami, R. A. Klemm, and K. Kadowaki
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Journal Title
Applied Physics Letters
Volume: 107
Pages: 082601-1-5
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Current Filamentation in Large Bi2Sr2CaCu2O8+δ Mesa Devices Observed via Luminescent and Scanning Laser Thermal Microscopy2015
Author(s)
T. M. Benseman, A. E. Koshelev, V. Vlasko-Vlasov, Y. Hao, W.-K. Kwok, U. Welp, C. Keiser, B. Gross, M. Lange, D. Kolle, R. Kleiner, H. Minami, C. Watanabe, and K. Kadowaki
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Journal Title
Physical Review Applied
Volume: 3
Pages: 044017-1-7
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Efficient Fabrication of Intrinsic-Josephson-Junction Terahertz Oscillators with Greatly Reduced Self-Heating Effects2015
Author(s)
T. Kashiwagi, T. Yamamoto, H. Minami, M. Tsujimoto, R. Yoshizaki, K. Delfanazari, T. Kitamura, C. Watanabe, K. Nakade, T. Yasui, K. Asanuma, Y. Saiwai, Y. Shibano, T. Enomoto, H. Kubo, K. Sakamoto, T. Katsuragawa, B. Markovic, J. Mirkovic, R. A. Klemm, and K. Kadowaki
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Journal Title
Physical Review Applied
Volume: 4
Pages: 054018-1-16
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] A high Tc superconducting terahertz emitter operated from 0.5 to 2.4 THz2016
Author(s)
T. Kashiwagi, K. Sakamoto, H. Kubo, Y. Shibano, T. Enomoto, T. Kitamura, K. Asanuma, T. Yasui, C. Watanabe, K. Nakade, Y. Saiwai, T. Katsuragawa, T. Tanaka, T. Yuasa, M. Tsujimoto, R. Yoshizaki, T. Yamamoto, H. Minami, R. A. Klemm, and K.Kadowaki
Organizer
American Physical Society March Meeting 2016
Place of Presentation
Baltimore, Maryland, USA
Year and Date
2016-03-14 – 2016-03-18
Int'l Joint Research
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