2015 Fiscal Year Research-status Report
共焦点動的光散乱法による粒子径・形状・濃度測定と細胞計測への応用
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15K04701
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Research Institution | The Graduate School for the Creation of New Photonics Industries |
Principal Investigator |
石井 勝弘 光産業創成大学院大学, 光産業創成研究科, 准教授 (30311517)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 動的光散乱 / 粒子径計測 / 粒子濃度計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
共焦点動的光散乱測定システムを構築した。He-Neレーザーからのレーザー光をコリメートし、背面ポートからオリンパス社製倒立顕微鏡IX71に導入する。レーザー光はミラーユニットに取り付けられたビームスプリッタで反射され、対物レンズを通り、測定試料内に集光される。試料からの後方散乱光は、対物レンズを透過し、左ポートに取り付けられたシングルモードファイバへ結合され、光電子増倍管で検出される。散乱光の時間信号は、電子相関器(ALV5000)へ送られ、散乱光の時間相関関数が計算される。 構築した共焦点動的光散乱測定システムを用いて、ポリスチレンラテックス標準粒子からの散乱光の時間相関関数を測定した。測定試料は、体積濃度1%、粒子径100nmのポリスチレンラテックス標準粒子、それを2倍ずつ512倍まで希釈した溶液を用いた。対物レンズはNAが1.15の40倍のものを用いた。 測定される時間相関関数は、あらかじめ研究代表者が理論的に検討していた通り、散乱光同士の干渉による緩和と測定領域内の粒子数の揺らぎによる緩和の2つの緩和が現れることが確認された。さらに、それぞれの緩和時間から粒子径が推定できること、推定された粒子径はほとんど粒子濃度に依存しないことが確認できた。一方、粒子数の揺らぎによる時間相関関数の緩和大きさが粒子数に反比例すること、そこから粒子の濃度を測定可能であることが明らかにされた。粒子濃度が薄い場合は、散乱の強度が弱くなるため、推定される粒子径と粒子濃度の誤差が大きくなるが、体積濃度が1%から0.001%の広い範囲で、粒子径と粒子濃度の測定が可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、共焦点動的光散乱測定システムを構築した。共焦点動的光散乱測定システムは、高濃度から低濃度の広い範囲の粒子に対して、粒子径と粒子濃度の測定が可能であることを明らかにした。 低濃度の溶液では散乱光が弱くなるため、試料容器底面からの反射光などの迷光が問題になる。これを低減し散乱光の検出感度を向上させるために、リング状のコリメート光を用いることをはじめに検討した。しかし、照射光をリング状にするとコリメート状態が悪くなり、測定試料内でのレーザー光を集光状態も悪化し、検出される散乱光が逆に弱くなった。そこで入射光を試料に対してわずかに傾けることにより、迷光を防ぐことを検討した。これにより、低濃度の試料の測定が可能となった。 粒子からの散乱を強くするため、短波長(532nm)で高強度(20mW)のレーザーを購入したが、共焦点動的光散乱測定システムに導入することはまだできていない。また、粒子の大きさに測定感度の依存性、入射光の集光領域の大きさと粒子数測定の感度の関係がまだ確認できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
共焦点動的光散乱測定システムの原理確認をすすめる。粒子径と粒子濃度の測定範囲を明らかにするために、動的光散乱法での粒子径測定の限界である10nm程度の標準粒子、および、タンパク質の測定を行う。さらに、複数の粒子の混合溶液に対して、粒子径分布およびそれぞれの粒子の濃度測定についても検討する。 また、散乱光の偏光特性による粒子形状の測定の検討を行う。直交する2つの直線偏光の成分の散乱光の相互相関関数を測定し、粒子形状に対する相互相関関数の変化を明らかにする。球形の粒子では2つの偏光成分の散乱光強度は常に等しく強い相関が現れることが予想される。一方、球形粒子以外では、2つの偏光成分の散乱光強度は等しくなくなる。1つの粒子の散乱光では、粒子は溶液中で回転しているので、一方の偏光成分が強くなるともう一方は弱くなり負の相関が現れる。多数の粒子が存在している場合は、相関がなくなっていくことが予想される。球状のラテックス粒子やナノロッドなどを測定試料として用い、2つの直交散乱光成分の相互相関関数と粒子形状の関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究開始が10月からになったため、予定してい成果発表のための旅費を使用しなかった。また、測定試料などの消耗品は大学の基盤経費等で購入したものを使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の成果発表のための旅費、測定試料などの消耗品費として使用する。
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