2016 Fiscal Year Research-status Report
共焦点動的光散乱法による粒子径・形状・濃度測定と細胞計測への応用
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15K04701
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Research Institution | The Graduate School for the Creation of New Photonics Industries |
Principal Investigator |
石井 勝弘 光産業創成大学院大学, 光産業創成研究科, 准教授 (30311517)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 動的光散乱 / 粒子径計測 / 粒子濃度計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
共焦点動的光散乱測定システムのレーザーを出力20mW、波長532nmのファイバー出力型DPSSLレーザーに変更した。レーザーの強度は10倍以上、波長が短くり散乱光の強度は2倍程度になったことで、感度が向上した。 粒子径20nmのポリスチレン粒子からの散乱光の時間相関関数を測定した。体積濃度は0.01%から0.32の範囲で変化させた。時間相関関数から粒子数と粒子径の推定が可能であることを確認した。 次に、ウシ血清アルブミンタンパクの時間相関関数の測定を行った。重量濃度は1.0から8.0%の範囲で変化させた。ウシ血清アルブミンタンパクの粒子径は10nm程度である。改良した共焦点動的光散乱測定システムでウシ血清アルブミンタンパクの散乱光の時間相関関数の測定に成功した。時間相関関数からウシ血清アルブミンタンパクの粒子数と粒子径の推定にも成功した。 最後に、2種類の粒子の混合溶液に対して、時間相関関数からそれぞれの粒子径と粒子数の推定を試みた。2種類の粒子からの散乱光の時間相関関数を動的光散乱理論より導出し、それをフィッティング関数として、粒子径と粒子数の推定を行う。時間相関関数の測定は粒子径20nmと100nmの2種類の粒子の混合液を用いた。散乱光強度がほぼ等しくなるように、粒子径20nmの粒子の体積濃度は0.32%、100nmは0.05%とし、その混合比率を変えた測定を行った。共焦点動的光散乱の時間相関関数は2つのことなる緩和時間の減衰を示し、早い減衰から粒子径。遅い減衰から粒子数を推定する。混合溶液の時間相関関数では、早い減衰から2種類の粒子径をそれぞれ推定することができた。しかし、遅い減衰では、全粒子数の変化による影響はみられるが、粒子数を推定することはできなかった。しかし、時間相関関数の測定時に同時に測定される散乱光の強度の情報を用いることで粒子数の推定が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、共焦点動的光散乱測定システムのレーザーを変更した。レーザーを変更したことで、測定試料に照射するレーザー光の強度を10倍以上、さらに波長が短くなったことで散乱光の強度が2倍程度になった。これによりより小さい粒子の測定が可能となった。 粒子径20nmのポリスチレンラテックス標準粒子と粒子径10nmのウシ血清アルブミンタンパクの粒子径と粒子数の同時測定に成功した。これにより構築したシステムが10nm程度の粒子測定が可能であることを確認した。また、生体中のタンパクの大きさ及び濃度の測定が可能であることを示した。より小さいタンパクの測定を行うには、迷光の対策が必要であると考えている。 また、2種類の粒子の混合溶液中の粒子径と粒子数を時間相関関数から推定する方法を考案した。また、粒子径20nmと100nmの2種類のポリスチレンラテックス標準粒子の混合液を用いて、粒子径と粒子数の推定を行った。時間相関関数から2種類の粒子径の推定はできたが、粒子数の推定まではできなかった。しかし、散乱光の強度の情報を合わせると、粒子数の推定も可能である。時間相関関数のみから粒子数の推定を行うには、迷光の対策が必要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
粒子径1nm程度またはそれ以下のタンパクの散乱光を検出するため、また、時間相関関数から複数の粒子が混合した溶液中に対して、それぞれの粒子の粒子径と粒子数の推定を行うために、迷光対策を行う。現在、問題になっている迷光は、測定試料容器下面からの反射光であると考えている。レーザーの照射方向を傾けることで対策を行い大幅に改善されているが、完全になくなっているわけではない。また、入射光と反射光を分けるために用いているハーフミラーの抜け光も迷光となっていると考えられる。これらの迷光をなくすために、測定試料の上方からレーザーを照射するようにシステムの改良を行う。これにより上記の2つの迷光はほぼなくなると考えられる。しかし、前方散乱の配置にすることで、時間相関関数の早い減衰の緩和時間が長くなり、遅い減衰との分離が困難になる。そこで、粒子径と粒子数の同時測定が前方散乱の配置でも可能か確認する。 また、散乱光の偏光特性による粒子形状の測定の検討を行う。直交する2つの直線偏光の成分の散乱光の相互相関関数を測定し、粒子形状に対する相互相関関数の変化を明らかにする。球形の粒子では2つの偏光成分の散乱光強度は常に等しく強い相関が現れることが予想される。一方、球形粒子以外では、2つの偏光成分の散乱光強度は等しくなくなる。1つの粒子の散乱光では、粒子は溶液中で回転しているので、一方の偏光成分が強くなるともう一方は弱くなり負の相関が現れる。多数の粒子が存在している場合は、相関がなくなっていくことが予想される。球状のラテックス粒子やナノロッドなどを測定試料として用い、2つの直交散乱光成分の相互相関関数と粒子形状の関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
昨年度の予算で購入したレーザーを用いてシステムの改良を行ったので、光学部品等の物品費を使用しなかった。成果発表を見送ったため旅費も使用しなかった。測定試料や容器等の消耗品は大学の基盤経費等で購入した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、測定システムの光学系を変更するので、そのための光学部品等の購入に使用する。
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