2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノサイズ光学窓の形成による超解像効果発現の最適条件の理論的探索
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15K04702
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
佐野 陽之 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (80250843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 正史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (60356954)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 計算物理 / シミュレーション工学 / 光物性 / 光記録 / 第一原理計算 / 相変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.高温・融解状態の光学誘電率の第一原理計算: 超解像に最適な材料の探索と融解による光学誘電率変化のメカニズムを明らかにすることを目的に、Sb2Te3を対象にした第一原理計算を行った。分子動力学計算による融解状態の構造モデル作成、結晶状態と融解状態の電子状態及び光学誘電率の計算は昨年度ほぼ完了したが、本年度は計算結果の詳細な解析を実施した。Sb2Te3結晶は半導体であるが、液体状態への相変化によってフェルミ準位付近の電子状態密度が増大し金属的な電子状態に変化する。しかし、可視光領域の光学誘電率実部の値は小さな負の値となり、典型的な金属とは異なっていることが分かった。また、融解による波長405nmでの光吸収の減少が示されたが、この起源は波長405nmでの光学遷移の減少によるものではなく、より長波長である800nm付近の光学遷移の減少によるものであることが分かった。 2.過渡現象を考慮した光伝播-熱伝導の連成物理シミュレーション: 超解像技術のキーとなる微小光学窓の形成メカニズムの理論解析のために、過渡現象を考慮した新しいシミュレーションシステムの開発を行った。昨年度は粗いメッシュによる動作実証に成功したが、融解熱の効果を取り入れた計算が収束しない問題が起こった。本年度は、この問題を融解熱が生じる温度範囲を最適化することによって解決し、InSbを機能層とする大規模モデル計算を行った。計算結果を解析し、融解熱の効果によってInSb層の融解領域がディスク回転方向にずれることが分かった。また、計算によって求められた超解像状態の応答関数は非対称なピーク構造を持つことが示された。以前の定常計算による計算結果と概ね似ているが細かい部分に違いが見られ、予測シグナル波形は超解像再生シグナルの実験データを良く再現することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた第一原理計算によるSb2Te3の光学誘電率の計算結果の解析を行い、波長405nmにおける光吸収の融解による変化のメカニズムを明らかにした。また、Sb2Te3とInSbの違いについても概ね理解することができた。他の材料(GeSbTeなど)については、現在計算の準備を始めたところである。 過渡現象を考慮した物理シミュレーションシステムは、融解熱の問題も解決し、完成することができた。本年度に予定していた大規模モデル計算を実施し、超解像状態の応答関数を求めることができた。これらの計算結果を解析しInSbを機能層とする超解像現象のメカニズムを理解することができ、研究計画で予定していた結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
超解像のための有望な機能層材料であるInSbとSb2Te3の第一原理計算と解析がほぼ完了したので、他の材料としてGeSbTeなどに関して同様な計算を行い、電子状態と誘電率の融解による変化を調べていく。 過渡現象を考慮した物理シミュレーションに関しては、InSbとは異なる光学的性質を示すSb2Te3を機能層とする大規模モデル計算を行っていく。これにより機能層材料の違いによる超解像現象のメカニズムの違いを明らかにし、超解像のための最適条件に関する知見を得ていく。また、複数機能層の超解像シミュレーションについても検討していく。
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Causes of Carryover |
計算用ワークステーションのメモリ増強を予定していたが、H28年度に行った大規模物理シミュレーションではメモリ増強をしなくても実行可能であったため見送ることにした。また、当初予定していた成果発表が体調不良のため取りやめとなり旅費を執行できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、計算データを保存するためのネットワークハードディスク、計算及び解析のためのソフトウェアの購入・更新費用、研究成果の外部発表のための旅費・論文投稿料として使用していく予定である。メモリ増強に関しては、今後実施する大規模計算で必要となれば購入を検討する。
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