2015 Fiscal Year Research-status Report
軟X線レーザー時間分解小角散乱法によるフェムト秒レーザーアブレーションの研究
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15K04706
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
熊田 高之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, リーダー (00343939)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フェムト秒レーザーアブレーション / 非熱効果 / アブレーションダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
軟X線レーザーおよび軟X線用CCD検出器を用いて小角散乱測定装置を構築した。本装置を用いて可視・赤外光用の回折格子を標準試料としてその散乱測定を行ったところ、理論予想どおりの散乱パターンが得られた。しかし、フェムト秒レーザーアブレーションによって縞状パターン生成が確認された金試料を用いて同様の実験を行ったところ、対応する散乱像を得ることができなかった。この縞状パターンは回折格子に比べて周期対称性が悪いため散乱スポットは大きく広がってしまい、各スポットの散乱強度がCCDカメラの熱ノイズに隠れてしまったことがその原因と考えられる。 一方、フェムト秒レーザーアブレーションダイナミクスの研究を目的とした紫外・赤外プローブ光による時間分解反射率実験に関しては2つの成果を挙げた。一つ目は、高強度フェムト秒レーザーを照射した高分子試料において膜剥離を示す時間分解反射率の振動が観測されたものである。照射後の顕微鏡写真像との比較から、レーザー光照射後数十ピコ秒以内に非熱効果による膜状剥離体が現れ、そのサブナノ秒後に熱損傷によって照射面が損傷しているという結論が得られた。 二つ目は、ダブルポンプパルスの時間間隔を変えながら照射後に現れる時間分解反射率の振動変化を測定したものである。ダブルポンプパルスの照射間隔が20ps以下では膜剥離を示す反射率の振動は残存するのに対し、それ以上では消失していることが観測された。本結果から、高強度フェムト秒レーザー照射から非熱効果によって剥離膜が生成する時間スケールは20ps程度であり、それ以上の間隔を開けて照射した第2ポンプ光は第1ポンプ光照射によって生成した膜を破壊しているものだと推察した。膜剥離時間の理論予測値も10psであり、本実験を通じてその妥当性が証明された。 これらの研究は2報のApplied Physics Letters誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全く新しい試みであったX線レーザーを用いた小角散乱測定を成功に導いた点は評価できるが、光学デバイスではなく、測定対象とするフェムト秒レーザーアブレーションした試料において散乱を得ることができなかったことは今後の課題である。 一方、X線レーザーを用いていないものの、紫外・赤外プローブ光を用いた時間分解分光研究に関しては、その成果がApplied Physics Letters誌に2報掲載されるなど順調に成果を生んだものと自負している。その知見を生かして今後の研究進捗につなげていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究実績である、可視・赤外光用回折格子を模擬試料として用いたX線レーザー小角散乱測定の結果は本年度5月に開催されるThe 15th International Conference on X-Ray Lasersにおいて発表するとともに論文執筆も行う予定である。また、測定手法の改良に向けて必要とされるイメージング検出器の条件を見積っている。また、試料に照射されるX線レーザー光強度の増加に向けて、現在用いられている赤外・可視・紫外光フィルターの最適化も検討している。それらの対策が今後の装置開発の成否の決定するものと思われる。
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Causes of Carryover |
X線小角散乱測定システムの構築に時間を要し、当初計画で平成27年度に購入し導入を予定していた「軟X線検出器」の年度内購入が間に合わず、また、X線小角散乱測定システムにおける検出器以外の改良点を模索するのにも想定外に時間を要したため、一部において当初計画に沿った直接経費の執行が行えず、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画で購入予定であった小角錯乱測定に必要となる軟X線検出器のスペックを、昨年度の実験結果を考察しながら念入りに検討した上で購入に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)