2015 Fiscal Year Research-status Report
プリンティング熱電デバイスを指向したBi-Te熱電インクの高性能化
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15K04720
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小矢野 幹夫 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (60195873)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 熱電変換 / エネルギーハーベスティング / 熱電インク / 廃熱利用 / 環境・エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,プリンティング熱電素子の実現を目指し,我々が産学共同研究により開発した「Bi-Te熱電インク」の高性能化を目指す.この熱電インクは熱電材料Bi2Te3のナノ粒子を有機溶媒に分散したものであり,印刷の後熱処理を行うだけで熱電モジュールが作製できる物である.平成27年度は下記の2つの事項に関して顕著な研究実績を得た. 1. 熱電インク中のインク粒子の直接観察 熱電インクの高性能化のためには,インク中の熱電微粒子の形状と大きさに関する直接的な情報が必要である.我々は熱電インクを洗浄したシリコン基板に担持させ,溶媒を乾燥させた後に,AFMによるインク微粒子の観察を行った.観察の結果,熱電インクの形態は大きく2種類に分類できることが明らかとなった.一つは大きさが 14×6 nm程度の微小単結晶,もう一種類の粒子はサイズが大きなBi2Te3凝集粒子である.統計処理を行うことにより,これら単結晶粒子と凝集粒子の統計分布が添加する有機保護剤の有無や種類によって変わることを明らかにした.これは今までの粒度分布測定では得られなかった情報であり,今後の研究推進に大変重要である. 2. 熱電インクから作製したナノバルク熱電素子の性能向上 上記の熱電インクの熱電物性を評価するために,熱電インクを種々の条件下で乾燥させた後,これをダイスに詰めてホットプレスを行ってナノバルク体を作製した.ナノバルク体を直方体に切り出し,10 K から340 Kの温度範囲で熱電特性を測定し無次元性能指数 ZT を算出した.アルゴン雰囲気中で乾燥させただけの場合は,最大値が ZT =0.32 程度であるのに対して,真空乾燥工程を加えることにより,室温で ZT =0.5 まで上昇させることに成功した.これは主に電気抵抗率が減少したためで,ナノバルク内での微粒子同士の接触抵抗の軽減が性能向上の鍵であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のように本研究の進捗は順調に推移している.これらの業績に基づき,我々は当該年度に3件の国内学会議報告を行った.これに加えて,平成28年度実施予定であったナノ粒子熱電評価システムも前倒しで構築し27年度内に完成させ,実際にBi2Te3ナノ粒子の熱物性を測定・評価することが出来た.以上の状況から,進捗状況は「当初の計画以上に進展している」と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は順調に進捗しており,平成28年5月に武漢で開催される国際熱電会議においても「High-oriented thermoelectric nano-bulk fabricated from thermoelectric ink」と題した発表が既に採択されている.平成28年度以降も基本的には研究計画に沿って研究を実施していくが,高性能化の具体的手法としては溶液プロセスのみでなく,レオロジーを積極的に活用したナノバルク配向制御を取り入れていく予定である.
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Causes of Carryover |
本研究課題は,2015年10月に基盤研究(C)として追加採択を受けたものである.予算執行期間が短くナノ粒子に配位する保護剤の最適化を次年度に行うこととしたため,次年度使用額が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ナノ粒子に配位する保護剤の最適化を実施した後,Bi-Te熱電インクの高性能化を実現するため,研究計画に沿って助成金を計画的に執行する.
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